岩嵜修平

正欲の岩嵜修平のレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
3.5
ネタバレ注意の触れ込みがあった割には特に衝撃を受けることもなく。世代にもよるのだろうが、朝井リョウ氏と同じく30代以下だと受け取りやすい話だと思う。誰しも他の人には言えない秘密があり、それを分かち合えた時の喜びは一入(ほとんどの場合、居ない)で、実は違った時の苦悩も一入。

基本的に「欲」は他人を巻き込まず自分で処理する内は問題ない中で、「正欲」=「正しくあろうとする欲」はタチが悪い。正しさは自分一人では成り立たず、他人を強制してこそ成り立つ。特定の嗜好ではなく、誰しもに少なからずある欲。その欲に目を向けること。自分は常に間違うという目を持つこと。

「正欲」を体現する役を稲垣吾郎に託したのは適切で、磯村勇斗もいつも通りの素晴らしさ、佐藤寛太も東野絢香も見事な演技だったが、やはり出色は新垣結衣だろう。こんなに魅力的でなくガッキーを映すことが出来るのか。仕事先でのアップになった時の左右非対称な溶けたような顔を表情ひとつで表現。

舞台挨拶のライブビューイング回で観たが、新垣結衣さんが指輪をしてないだけで気になってしまうレベルには批評性があるキャスティング。逃げ恥で契約結婚から恋愛結婚に展開し、現実でも結婚に至った彼女ならではの虚実入り混じった演技。『違国日記』しかり役者として次のステージに向かっている。
岩嵜修平

岩嵜修平