小麦番長

正欲の小麦番長のネタバレレビュー・内容・結末

正欲(2023年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

【本当に辛いのは‥‥ (原作はもっと面白いのだろうと期待を込めつつ)】

それこそ大半の人には理解されないだろうけど、私は小児性愛者に同情している。
どれだけ水遊びしようが水をネタに自慰をしようが捕まらないし、公園の噴水で素っ裸で自慰をしたらさすがに捕まるだろうけど小児性愛者ほどの罪には問われない。

性の対象が「子供」の人は犯罪を犯さない限り満たされない。
相手が成人なら異性でも同性でも選びさえしなければ「同意」を得るのはそう難しくはないし、お金さえ出せば風俗もある。
けど相手が子供の場合はそれだけで犯罪になってしまう。
好きで小児性愛者になった訳ではないだろう。
選んだ訳ではないだろう。

そう考えて、性の対象が水である3人の辛さ・孤独があまり伝わってこなかった。
罪に問われない「水」が興奮の対象でまだ良かったじゃん、と。
&、そんな超マイノリティが同じ学校の同じクラスに居たなんて、超恵まれてるじゃん。
孤独を感じるのは人に興味があるからであって、孤独を感じてる時点で地球生命体である以上に十分「人間」だと思うけどな??

そもそも「性嗜好が超マイノリティ→社会性が薄く自死を考えるほど生きづらい」
の設定がはて??なのだが。
比較の問題ではないんだろうけど、「社会性」と言うなら全く人と接する事ができず人も気持ちも理解できず外で仕事できない人なんてもっと居るよ?
原作では深掘りされてるのかな。
止めなくてはと頭では解っていても止められない万引きおばさんの方がよほど生きていくの大変かと。

男性の性に嫌悪しかないのに自身には性欲があり(らしい)男性を好きになってしまう神戸さんが一番厄介そうだなと思った。
男の人を好きになるのになぜ必ず性が介在してしまうの!?
の答えが出ないままジレンマになっている様子が伝わった。
水と違って相手は意思がある生き物なのだし、アセクシャルらしい磯村勇斗と新垣結衣よりよほど苦しいだろう。

さておき。
ラスト、自分たちの存在を「有り得ない」のひとことで一蹴する稲垣吾郎に向かって新垣結衣が「私は(あなたの奥さん子供と違って)居なくならないから」
と言い放って終わるのとか、まースッキリしたし面白かった。

新垣結衣、良かったですね!
同級生に向かって「うっとおしい消えろ」と言い放った時の目とか。
田舎オーラを纏った荒んだ感じも良かった。

ゴロちゃんにはあんなステレオタイプではなく、「うんうん、多様性だよね!解るよォ〜解る解る!!」と口先だけキャラの方が良かったのでは笑

状況を理解しててあえて口にしない宇野祥平も良かった。(でも出世するのは稲垣吾郎みたいな人だよねぇ)
あと神戸さんを演じた女優さんも。


追記 :
朝井リョウ氏インタビュー抜粋

「私は多様性という言葉から、自分で自分のことを決めていい快適さと同時に、自分で自分の意義や価値を見出していかなくてはならない地獄も受け取った実感があります。決めつけるようにジャッジしてくる存在がいないから、『自分はあの人よりもダメ』とか『この人よりはまだマシ』とか、日々、自分で自分をジャッジし続ける地獄。そこで負う痛みこそ『生産性のない自分は○○する資格がない』思考の根にあるものなのでは、と思った時、小説が生まれる予感がしました」
小麦番長

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