のこ

正欲ののこのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
3.9
昔、テレビで建造物に恋する人を見たことがある。橋にハグをしたりキスをしたり、「恋人」のように話しかけていた。ほかにも、ペンキなどのヌルヌルしたものを体に塗るつけるのが趣味という人もいた。はじめは変わっていると思ったけれど、趣味嗜好は人それぞれ。ただ、人を傷つける歪んだ性癖に変わってしまうおそれもある。

今作は生きづらさを感じながら毎日を「過ごす」人たちの群像劇だ。過去のトラウマから男性恐怖症になった大学生、明日しのうと考える男性、水に魅力を感じる人。さまざまな思いを抱える人たちが登場する。

結婚に出産、子育て、キャリア。人それぞれに「心のものさし」があって、それを他人に押し付けるのは不親切だ。人にとって「普通」なことは自分にとっては「普通」ではないことは往々にしてある。

物語の最後に「普通じゃない」と言われた主人公が「普通のことなので」と相手に言い放ち、特大ブーメランを食らわせるシーンはスカッとした。

また、「地球に留学している気分」「指輪をして擬態しよう」など、独特なセリフが素敵だった。
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