のこ

PERFECT DAYSののこのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.3
トイレ清掃員の日常に焦点を当てた映画。

主人公の平山(役所広司)は木造の風呂なしアパートに住み、ラジカセや本、観葉植物とともに暮らしている。毎日同じ時間に起きてトイレ清掃の現場に向かい、終わったあとは行きつけの銭湯や飲み屋に行くという質素な生活を送る。仕事の合間や帰り道にはきれいな木や空を眺めたり、写真を撮ったりしてとても幸せそうだった。

そんな平山も涙を流す場面があり、じつは内面では今の生き方に葛藤しているのではないかとも感じた。平山の姉が「まだトイレ清掃員をしてるの?」と心配そうな表情で問いかけるシーンで、姉が去ったあとに涙を流していたからだ。寡黙な平山の表情一つひとつが胸に響いた。

役所広司の演技が本作の大きな見どころだが、遊び心あふれる最先端のトイレが登場したり、70年代、80年代の曲をカセットテープで聞いたり。古き良きものと新しいものが入り交じる、日本文化の魅力を再発見できる作品でもあった。
のこ

のこ