SAtone52484

フェイブルマンズのSAtone52484のレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.2
映画愛、というより映画製作者が対峙する本質、みたいなものを「噛み締める」作品。



ミシェル・ウィリアムズとポール・ダノの演技が素晴らしくて、家族(というか、夫婦)の在り方の話、と感じる方に引っ張られるのですが、
振り返ると、やはり映画制作者の視点が散りばめられ、この作品の根幹を成している事に気がつきます。

同級生との映画製作で、演技のDirectionをし演者が覚醒する… なんてまさに「監督」な感覚もあれば、
些細な日常に、見落としていた母の秘密が隠されている事に気がつくも、それは伏せて「望まれた通り」に編集をしたり、
両親の離婚が決まってなお、淡々と編集作業をし、妹から「自分勝手だ」とヤジられたり(でも、試写で観てもらうんだけどね)、
よかれと思って編集したら、写された本人が望まぬ描かれ方であり、その心の闇みたいなものを吐露されたり…
映画製作は「孤独」なものであり、観客とは違う立ち位置であることが浮き彫りになります。
劇中での作品の上映は、「観客」と「映写機の横に立つ少年サミー」の視点があり、サミーが観ているのは作品ではなく「観客」なんですね。
この「編集」の孤独さ、みたいなものが、じわじわとくるのがいい。

でも、もしかすると… エンジニアの父も、ピアニストの母も、やりたい事に一直線で、不器用で、だからこそ「孤独」は避けられない、つまり誰もが「孤独」なんじゃないか… なんてことも考えずにはいられません。

スピルバーグ作品だ!とメリハリのある内容を期待すると、思いの外つつましやかな展開で少々物足りなさを感じる可能性は否めないですね。
私はこの「噛み締め感」、好きでした。

特にエンディングは、デイヴィッド・リンチ演じるジョン・フォードとのやり取りが、映画監督としての展望が感じられる感じで、なんだか粋でした。
SAtone52484

SAtone52484