Mariko

フェイブルマンズのMarikoのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.2
まず最初に断っておくと、スピルバーグは凄いと常々思っているけれど、熱烈なファンかというとそれほどでもない汗。

さて今作品。そこここにスピルバーグの過去作を喚起させるモチーフが見られるけれど、それは過去作へのオマージュではなく、逆にそういう経験があったからあの映画たちができたのだという構造。けれどそういった過去へのノスタルジーでは終わらず、映画がもつ魔力と怖さに魅せられながらその先へと向かう姿が描かれる。終盤のとある場面では感涙に咽んだ。

ところで私はかなり幼少の頃からジェームズ・スチュアートのファンだったのだけど、出演作を選んで観られるようになったのはレンタルビデオが普及した大学生以降。それまではTVで「偶然」観る以外にほぼ機会はなく『地上最大のショウ』はだいぶ大人になってから観た。『リバティ・バランスを射った男』は初めて観たのは子供の頃だったけど、すごく好きだったので今回も「うわ、きたあ!」と。今回「も」なのは、『ベルファスト』でも主人公が家のTVでこれを観るシーンがあって「おおお!」となったから。ケネス・ブラナーならまだしも、スピルバーグに至ってはそういう体験が私と重なるはずはない世代のに、なんだこの『リバティ・バランス現象』は。それだけ公開時から相当以後に至るまで印象的な作品だったということか…(まったく意外ではないけれど)。そういう意味で、私にはこれと『ベルファスト』の位置づけはかなり近いものだったかも。

それからママの弾くピアノが印象的。いわゆる有名曲ではない、けれどクーラウにクレメンティのソナチネ、そしてハイドンのソナタ。これらはピアノをある程度やった人なら一生懸命練習したことがあるはずのものばかり。何故この選曲?と思ったのだけど、スピルバーグのお母さんが実際に弾いていた曲だったのかどうなのか。サティはこれらとは全くテイストが違って、場面にとても合ってた。

まあ、そういうわけで私にとっても非常に個人的な経験とのリンクがたくさん(上記以外にも色々)あって、そういうものを刺激してくる不思議な、そして特別な作品だった。

キャストはママのミシェル・ウィリアムズはじめ、パパ、ベニーが想像通り最高だったのはもちろんだけど、この子かわいいなあああ と思った数分後に「そうだ、これジュリア・バターズ出てるはずじゃん!彼女じゃん!!」と気づいた時には、毎度そうと知らずにそう思わせてくれちゃう彼女の底力にまたしても打ち震える私笑。
高校のヒーロー、ローガンくんは新人らしいけど、私は観てるあいだじゅうずっとクリストファー・リーブを思い出してた(イメージ)。

それにしても、ラストシーンまで音楽が誰だかわからなかった汗。
音楽地味だけどいいなあ誰かなあとは思ってたのに、作品のテイストからして当然ではあるのだけど、お得意の跳躍進行もなければお家芸ともいえるストリングスの超高速パッセージもなく、ダイナミックレンジの広さが売りのオーケストレーションもどちらかというと控えめ。でも、こういう振り幅と作品にそっと寄り添える楽曲こそが巨匠の本領発揮ともいえるのかも(わからなかった言い訳笑)
Mariko

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