Mariko

アフター・ヤンのMarikoのレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
4.5
近未来SFというスタイルを取りながらも、色々な意味でものすごく現代と地続きである印象。
スタイリッシュな映像はひんやりとした感触ながら、「家族」の在りようというか、そういった温かみをも感じさせる。その、ひんやりとした温かさ(矛盾そのものなんだが…)みたいな距離感がこの家族そのものでもある辺りが凄い。

“テクノ”(と呼ばれるアンドロイド)のヤンを修理に出すくだりは、まるでトラブルが起きたMacやiPhoneを修理に出すかのような趣で描かれるのだけど、そのプロセスが進むうちに、家族の一員であった彼の心(という表現が正しいかどうかはおいといて)のうちを知ることになる。この、彼の「記憶・記録」を見せていく映像がこの上なく静謐で美しく、観念的というか哲学的な思いに至らざるを得ない。

昨今、薄っぺらいポリコレに配慮した作品というのが多々あるけれど、今作はそんなレベルではなく、ものすごく重層的に多様性というものを考えさせてくれる。性別、人種どころではない、人間、クローンそしてAI。これらが普通に混在する社会で交錯する無意識の偏見、差別というものが巧みに織り込まれている。
かなり好き。
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