もーりー

山女のもーりーのレビュー・感想・評価

山女(2022年製作の映画)
3.8
「この山で私は人間になれた。」

神と日本独特のムラ社会の閉鎖性が、寓話的になりすぎず描かれていく。冷害に瀕す東北の山に囲まれた小さな村で、誰もその出口を知らないにも関わらず、「ムラの命」を大義名分に互いを貶め蔑む。穢多であることから、実の娘でさえも利用しなければならない状況は見ていて辛かったです。

映画というより、日本人の原風景に触れる景色を、繊細な光で照らした絵巻物のような作品。木漏れ日ひとつを取っても、ぼんやりした柔らかい光と粘稠な濃い光が描き分けられていたり、環境音が目を閉じたときのように聞こえてきたのが印象的だった。

主演の山田杏奈の演技が過去作品とは全く違う雰囲気で驚き。山から降ろされるシーンの虚ろな表情には圧倒されました。