もーりー

すずめの戸締まりのもーりーのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「死ぬのが怖くない」
そう前半で呟いていたすずめは、悲劇的な過去を塗りつぶし閉じ込めていたのだと思う。そんなすずめが、寂れた土地の忘却された思い出に触れつつ後ろ戸を「閉じ」ながら過去を「開いて」ゆく。

また、全編を通して実の親子関係が描かれていないことと、最後に幼少期のすずめに未来のすずめが語りかけるシーンが印象的。立場関係によらず、他者との対話の力を感じるとともに、家族という普遍的なテーマに限られない愛のかたちを感じました。

一方で、地震をテーマに扱ったり全国各地で色々な人に助けられたりするシーンは、その描写の甘さから冗長に感じたのは少し残念でした。物語のオチで、「忘れ去られた廃墟」と「忘れたいと思われている過去」が交差する場所として東日本大震災の被災地を使うというアイデアには驚かされましたが、ストーリーラインがやや肥満化し、作品のメッセージが浅く広く広がってしまった印象を受けました。

新海監督は前作の批評を受けて本作の脚本を構築したとのことですが、事実「2人の関係性」と「世界への破滅的な影響」のバランスをうまく取っているなと。ただ、君の名はのような非現実/青春/二人だけの世界のようなある種の気持ち悪さがある作品も好きです!

まとめると、忘れたい過去を閉じ込めることは、根本的な解決にはならない。自分と、誰かと、はたまた未来の自分自身と対話することは、偏りやすい認知や思考をあるべき状態に導いてくれる。そんなことを語りかけてくるような映画でした。

正直2回目の鑑賞では最後のすずめの言葉で泣きました。総合点を叩き出す、万人におすすめできる映画です。

P.S. ダイジン(右左)と宗像のおじさんのくだりは理解できなくて悔しいです…