Jun潤

山女のJun潤のレビュー・感想・評価

山女(2022年製作の映画)
3.7
2023.08.03

山田杏奈×森山未來×三浦透子×永瀬正敏。
気になってはいたもののいつも行く映画館での上映がなく、諦め案件だと思っていましたが、ちょうど上映劇場近くに用事ができたので鑑賞です。

舞台は18世紀後半の日本、東北。
当時二度目の冷害によって不作が続き、新しい子が生まれてもすぐに間引かれてしまうような状況だった。
そんな山村で暮らす少女・凛は、先祖が犯した罪によって畑は奪われ、食うものにも困り、山の神に向かって祈る日々を過ごしていた。
ある日、空腹に耐えかねた父が行った窃盗の罪を被り、凛は神隠しとして山の中に入っていく。
山の中には、白い髪を長く伸ばし、狩猟をして暮らす人語を発さない“山男”がいた。
肉を分け与えられ、危険な存在ではないと悟った凛は山男と生活を共にしていく。
しかし、村では凛の知り合いである泰蔵がマタギの情報を頼りに、凛を村に帰そうと動き始める。

これは森山未來のための作品と言っても過言ではないのでしょうか。
眉なし白髪長髪セリフなしと、ぶっちゃけ誰が演じても変わらないんじゃないのかとも思えた山男ですが、作品上の存在感の強さ、凛の人生にとっての重要性の高さ、そして目つきだけで森山未來だということが分かる唯一無二の表情の使い方でした。

作品としては、脇を固めるキャスト陣の演技も合わせて、18世紀後半を舞台にしているにも関わらず、現代にも通じる話に仕上がっていたと思います。
地元の有力者が村民から畑を奪い、食糧の配給を制限する、生贄が必要になった時には自分の娘は決して差し出さない。
持つものが持たざるものから奪い、持たざるものはさらに持たざるものを虐げる。
そして冷害の原因や対策もわからないまま娘を差し出すという、根拠や原因もないのに流言の流布に惑わされる場面は、18世紀後半という時代に限った話ではなく、科学がどれだけ発展していても、人間の根幹が変わっていないのなら、同じような状況、もっと酷い事態にまで発展する可能性もあるのではないかと感じさせる骨太な作品でした。
Jun潤

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