さすらいの旅人

山女のさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

山女(2022年製作の映画)
3.7
★早池峰山は女神様が宿る心の救い
【VOD/WOWOWオンデマンド/配信視聴/シネスコサイズ】

この映画は明るく楽しい映画ではない。
民話伝承に基づく物語だがファンタジーではなくリアルな生活が描かれる。冷害と飢饉に襲われている18世紀後半の東北の山村が舞台だ。その村は口減らしのため赤子は葬られ、村を牛耳る村長たちは村人に飢えの我慢を強いる。主人公の凛は障害のある弟の面倒をみながら絶望的な生活を送るが、ある事から禁断の山神様の地に入って行くストーリだ。

本作は現代社会にも通じる貧困、格差、偏見、差別をこの寒村に縮図の様に描いて行く。そして粗末な食事や村八分の恐れは自尊心を奪う。そんな中彼女の心のよりどころは女神が宿る早池峰山だ。山女と化して行く彼女は当然の姿だろう。撮影と音楽が外国人のため、カメラの構図も新鮮なものがあったし、音の入れ方なども独特の雰囲気を出している。ストーリは暗いが背景の美しい自然は奥深くて神聖に描かれているので癒される。

ラストは儀式的でハラハラしたがもう少し後日談が観たかった。あと、山田杏奈は当然として、短時間出演の三浦透子の存在感には圧倒された。