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aftersun/アフターサンのoioiのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.3
結論を観客に委ねるタイプの映画はあまり得意ではないが、aftersunに関しては初めてその手法に心地良さを覚えた。
カラムの背景や苦しみ、ソフィが31歳を迎えるまでに歩んできた人生、バカンス以降の2人の関係性、何も語られないが、それがいい。

監督がインタビューで、幼いソフィが父について知ることには限界があったこと、それゆえの断片的な記憶であり、だからこそ監督自身も簡単に観客に答えを出したくなかったと仰っていて納得した。

あくまで語り手はソフィで、彼女を通して知る過去であるということに一貫性があって気持ちがいい。自分たちにカラムの抱えるものが見えなくても、それは当たり前で仕方のないことなのだ。

嗚咽するカラムの背中に、自分自身の父の若き日を重ねて視界が滲む。
「愛してるよ。忘れないで。」
どんな思いで書いたのだろう。

1つ1つのシーンの構図があまりに素敵で、「どうしたらそんな撮り方を思い付くの?」と驚きの連続だった。
冒頭でも流れていたカラムのインタビューをソフィが撮影しているシーンで、その様子をTV画面越しに映す構図が特にお気に入りで何度も思い出してしまう。

ー追記&記録ー
字幕翻訳は、信頼の松浦美奈さんだった。嬉しい。
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