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aftersun/アフターサンの大大のレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.9
父とふたりきりで過ごしたサマーベイケイションの中で、少女の主人公が目の当たりにした、大人というものの、謎の奔放さ、謎のしんどさ。

それが何だったのか、当時の父と同じ年齢になった今、記憶とビデオを通して見つめてはしんどくなるお話。



▼太極拳というスキルを与えるセンス

父親を自覚しながらも、どこか不安定で葛藤を抱えている父キャラがやる太極拳の安心感がすごい。

自身の不安定さへの自省の結果が太極拳をやるということなんではないかと思うけど、素の姿のときに見せる粗暴さと良いコントラストになってる。

瞑想だったら動きがなくて絵的に弱いし、太極拳は絶妙。



▼昔のビデオの使い方が普通のエモみ演出と違う

よくあるっちゃよくある昔のビデオカメラを使った演出には、「美しかったものが荒い画質の中に、より凝縮してる」みたいなのが多い気がするけど、

それを観ている、しんどそうな大人の主人公というとこまで描いていることから、少し意味合いが変わってきている。

思い出ビデオではあるんだけど、それを観ることで、居心地は良くなかったけど時間に身を委ねてるだけでよかった子供には二度と戻れないことや、

パパ感を必死に出そうとしてた父の姿を通して、今現在の大人になった自分のしんどさが強調される、一種の呪い的な象徴としてホームビデオがあるっていうのが、工夫されてるなぁと思った。

そして、友達のように自由に話せる間柄の父は、もうビデオと記憶の中にしかいないという。
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