ヤングパパと思春期入りたての女の子の、ある常夏のバカンスを淡々と描くという設定。
自分の境遇とはひとつも当てはまらないのに、心が日焼けしたような気分。日焼けした所は水に浴びると少し痛いけど、それは間違いなくあの思い出の痕跡で、いつか消えてしまう儚さに比べたら日焼けの痛みなんて大したことないのだろう。
結局父親が何を抱えていたのかは最後まで明かされないので、あくまで娘視点での物語に終始する、、のだが、父親と同じ年齢になったソフィも少しだけ出てくる。
すなわち、記録と記憶と想像が地続きで流れていく演出になり、この斬新さに胸を締め付けられる。それでも父親にとって辛かったバカンスも、当時の自分からしたら父親との一番の思い出なのだ。
娘がどれだけ励まそうとしても、父親はただ日焼け止め(英語ではアフターサン)を娘に塗る。まるで自分と同じ傷跡を残して欲しくないかのように。
かなり能動的に読みに行かないと旨味を感じられない一方で、ステディカメラで切り取られる画面の美しさが凄まじく全く飽きない。そしてメインキャストの２人の演技がとてつもなく良い。
脚本も素晴らしいけれど、それ以上に画造りと演技力だけで、永遠と観てられる作品になっている。まさに映画の力。
にしても子役の女の子。これが映画初出演ってマジ？
じんわりと余韻に浸れつつ、考察のための余白を残してくれる。近年でもトップクラスの名作でした。
