<概説>
皮肉屋。飲んだくれ。びっこ。
三者三様の曲者が地元有力者の手勢と大立回り。彼等は殺人犯を無事司法の手に引き渡すことができるのか。ハワード・ホークスが西部劇史に打ち立てた歴史的傑作。
<感想>
本作は『真昼の決闘』へのアンチテーゼとのことで。
公開当時非難轟々だったらしいアレのアンチテーゼなら。さぞ西部劇の真髄が詰まっているのだろうと身構えました。なるほどこれは確かに王道の西部劇らしい。
魅力的な仲間とのブロマンスに美女とのラブロマンス。圧倒的巨悪に智慧をめぐらせバッタバッタと快刀乱麻の活躍。
これほど分かりやすい娯楽映画もありますまい。
ただしこれが『真昼の決闘』のアンチテーゼかと言えば、なんだかズレている気もします。あちらは単に「民衆が助けてくれないのひどいよ〜」と言っていたわけではなくて、自分の無関心は結果自分に返ってくるという普遍的なメッセージを込めていたわけですし。
ただアンチテーゼがアンチテーゼになってない、これもまた映画観を考察する上ではおもしろい点ではあります。
対立項とされている視聴後の後味こそがきっと同時の西部劇には重要で、ロマンスこそが至上されたのでしょう。
そこにはメッセージ性はいらず。
まして含蓄のある人生の辛酸などいらず。
観客を楽しませなければ映画でないのだという時代。
「あの賞の最近の審査基準は〜」「最近の邦画の制作スタイルは〜」なんて。時流の変化を常々感じる身としては、この変化がまた愛おしく感じられます。