孤独な怪物の秘密。
その葛藤の苦しみは同情を得られるのか。
芽生えてしまったアンモラルな欲望への救済はあるのか。
ゲームでの描写や行為は嫌悪の対象となるが、映画の物語の中で語るに足るならば許容されるのか。
社会的に、性の多様性は認められても、あの類の欲望のある者は被害者を出さなかったとしても断罪されるのか。
黒い絵を描く怪物は、彼だけなのか。
我々に本作は問い掛ける。
あなたにも秘密はあるのでは。
飢えながらも捕食対象との距離を取り、理性により足掻きながら、必死に抑制していた欲望のダムは、秘密の露呈と他者の介入により、決壊。
獲物へと、ついに牙を剥いたマンティコアの、静謐でありながらも緊張感の溢れる長回しのシーンでは、凡百の映画では得られないような複雑な感情となった。
まさに獲物を喰らおうとしたその刹那。
きっと彼は、生まれて初めて見たのだろう。
黒い絵とは対極にある、あんなにも美しい絵を。
残酷。
哀れすぎる。
嫌悪感を抱きながらも同情。
個人的には、リアルな犠牲者がいないのであれば、といった見解。
哀しいけれど、そう生まれてしまったのだから。
しかし犠牲者を出してしまったらアウト。
それは絶対。
怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物とならぬよう心せよ。
お前が深淵をのぞく時、深淵もまたお前を見ているのだ。
「マジカル・ガール」でも行間を読ませるような余白、敢えて隠す描写がものすごく巧みだったカルロス・ベルムト監督。
本作でもまた本領を発揮している。
日本カルチャーへの強い愛も嬉しかった。
次作もとても楽しみです。