ゲームのクリーチャーデザイナーを主人公に、冒頭からVRゴーグルをかけてモーションキャプチャーによって怪物を創造する主観視点から、そんな彼の姿を捉える客観視点へと切り替わる。その主観と客観がシームレスに綯い交ぜになる感覚が面白く、作業場や関係者が集うパーティーの一室の壁にはゲームの世界やクリーチャーが描かれているため、現実の人間たちがゲームの世界に入り込んでしまったような錯覚に陥る。
そこから最も誤魔化しが効かない人間のキャラクターをゲームの世界で描くことになり、子供のキャラクターのモブを隣人の少年そっくりに作り込み、そんな「彼」をVRゴーグルを掛けて愛でるという異様な光景をこれもまた主観と客観を使い分けて演出する。この小児愛者という自らの中で飼いならしている怪物を本人は自覚しておらず、だが彼に好意を寄せている女性や職場の人事、さらには少年が描いたマンティコアの絵によって客観視させられることによって、自らの怪物性に気づき、絶望することになる。
ただし、小児愛者を題材にした作品としては展開に驚きはなく、ゲームが悪影響を及ぼすといった一昔前の価値観から抜け出せてはいない。現実と虚構、主観と客観が綯い交ぜになり、互いに侵食して乗っ取ってしまうような感覚も、中盤以降は減じてしまい、単なる不器用な男の恋愛映画になってしまうところが物足りない。