マイケル・マン念願のフェラーリ映画化だけあって、レースシーンになるとこだわり抜いた音響・画面設計の的確さが光る。フェラーリの赤がとにかく印象的に撮られており、ナイトシーンの美しさと相まって車体が妖艶に光り輝くのを見てるだけで、マイケル・マン映画のフェティシズムを感じさせる。だが、その赤は一方で血をも暗示しており、それが終盤の衝撃的なクラッシュシーンに収斂されていくのが見事。
ただし、アダム・ドライバー演じる主人公の夫婦や子供関係の話になると途端に物語の求心力が下がってしまうのが惜しい。レースシーンに直接関わっていない立ち位置ということもあり、かといって各々のドライバーの背景もそこまで描かれていないため、人間ドラマという面では深みが感じられず、やや薄味に感じてしまった。