【ニテヒナル】
ホームレスの一家が高速道路のサービスエリアを拠点に、利用客から寸借詐欺を働きながら糊口をしのぐ。その中で出会う古道具屋を営む女性に警察に通報されることでお話は暗転していく。そんな韓国映画。
貧困層の生活を描いているというので、まずは『パラサイト』の二番煎じ?という思いがよぎる。
家族ぐるみで小さな犯罪を犯しながら、それでも寄り添い暮らす様子がどことなくハッピーなのは『万引き家族』の韓国版?タイトルから『サバイバルファミリー』なんて愚の骨頂の作品も思い出すが、とにかく既視感で観る気はしなかった作品。
『パラサイト』x『万引き家族』なら、既に2022年に『ベイビー・ブローカー』をやったろ?!と。
ところが先週土曜の朝のJ-WAVE「Radio Donuts」で渡辺祐氏が「衝撃のラスト!」と煽っていたもんだから、つい、時間が空いた時に観てしまった。
韓国の格差問題はそれほど深刻なのか、あるいは単に『パラサイト』や『ベイビーブローカー』の二匹目のドジョウを配給会社が探して持って来てるのかは知らないが、ある意味で韓国社会の一面なんだろうなと思う。
古道具屋を営む女性(ヨンソン)も、『パラサイト』の若夫婦のような富裕層というわけではないが、父親(ギウ)が逮捕され、残る母(ジスク)と子たちの面倒をみるだけの余裕はあるようだし、子どもの世話をやくことで、ヨンソン自身の心の隙間を埋めようとする理由も物語の展開の中で見えてくる。
あとは、父ギウが服役し更生して出所したら、改めて生活を立て直せばハッピーエンドとなるはずが・・・。
さて、祐さん曰くの「衝撃のラスト」は・・・。
長女ウニの可憐さは特筆ものだったかな。デビュー当時の中森明菜をさらに幼く、小学生にしたような清楚さでした◎
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(ネタバレ含む)
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結論としては観なくても良かった作品(苦笑)。
似ているとされる『パラサイト』『万引き家族』と比べ、後追いで新鮮さがないこともさることながら、メッセージの深みにも乏しく、ラストに向けての展開も強引で無理がある。こりゃ、まったくニテヒナルだなぁ。
父親ギウの立場も理解しないわけではないが ― 彼にもまともな社会生活を送れなくなった暗い過去(トラウマ)があるにはある ― それにしても家族を養う父親、夫としての責任感の無さに同情の余地は、少ない。
エンディングをどう理解するか?
家族を奪われたと思ったギウが、警察から脱走し放火騒ぎを引き起こす。韓国警察のお粗末ぶりがギャグを通り越してリアリティを一層下げていて空しい。
最後にギウは嫁ジスクをかばって火の中に身を投じる(それが家族愛の表現だとしたらあまりにも説得力がない)。これが、衝撃のラストなのか?!
鎮火後、灰の中、焼け焦げたギウの下に無傷のジスクの姿があった。・・・またリアリティが下がる。
そして、妊娠中だったジスクは、無事に元気な赤ん坊を産み、子どもたちと幸せな新生活を送る様子が映し出される。
衝撃の出火シーンだったけど、望ましいエンディング ・・・ってことでいいのか?
と、思っていたら、一転、時間は巻き戻って、その出火の最中、養母ヨンソンと子どもたちが涙ながらに消火作業を見守るシーンが流れて暗転してエンドロール。・・・ん?ちょっと衝撃?!何だ、この描き方は?という驚き。
直前の数分の幸せな時間は何だったのか?こんなこと(ギウの暴走による放火)がなければ訪れていたのにという、ヨンソン、あるいはウニら子どもの願望の未来像だったのか?!
後半はどんどんと暗澹たる気持ちに観客を落しながらもラストでホッとさせといて、最後の最後にもう一回ちゃぶ台返しを喰らわせるような・・・。
それが衝撃なのか? う~ん、後味、よくないなあ。