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猿の惑星/キングダムの盆栽のレビュー・感想・評価

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)
3.7
シーザーはやはり"偉大な猿"だった


 「シーザー三部作」が完結してから7年。あれから300年後を舞台に、「猿の惑星」と化した地球で繰り広げられる完全新作。監督は『メイズ・ランナー』三部作を手がけたウェス・ボール。新たに気持ちを切り替えて望んだ本作は、仮にこれが三部作の第一章だとしたらぼちぼちな滑り出し。それなりにちゃんと『猿の惑星』していたので良きです。

 まず冒頭は意外な一幕でファン泣かせ。良い掴み。
 主人公はとある小さな村に住むチンパンジーのノア。主人公がチンパンジーだとどうしてもシーザーを意識してしまいがちですが、ちゃんと区別化できるようになっています。ですが両者にあるのは"思いやりの心"。これを持っている猿は人間に好かれるようです。

 とある出来事が村で起きてから物語は大きく動き出し、謎の人間ノヴァ(メイ)と出会う流れ。しっかりステップを踏みながら物語が進行しているので、安心して観れます。ここまでで観客はノアに感情移入をさせるよう促す。それと同時進行にオラウータンのラカから、我々も知る"あの"シーザーの伝説を教わるノア。この世界ではシーザーが完全に神、キリストとして拝められている。知恵を得た猿は、一種の宗教のようなものを作り上げるまで成長。そして、自らを"シーザー"と名乗るプロキシマスが現れ、物語はクライマックスへ。

 全体的に見て、140分越えの長尺ではあるものの、一切飽きることなく最後まで楽しめたことは事実。ですが、丁寧な前半とは異なり、後半の展開の先走り感が強い印象。前半は文句の言い所がないほど良かったのですが、プロキシマスが現れてからラストまでが少し呆気ない。プロキシマスのキャラとか最高に良い味出せるはずなのに不完全燃焼。非常に勿体無い。ノアの成長譚としても展開が早すぎるからか、後半のノアは気付けば遠い存在になっていきました。猿の成長速度が人間の5倍だとしたら納得。

 個人的にかなりテンションが上がったのは『猿の惑星』('68)のオマージュシーンがかなりあったところ。予告編から分かるシーンだと猿が人間狩りをするシーン。戦法が1968年版と類似していたので感激。ようやく現代の最新技術でオリジナル版が復活した感覚です。それ以外のオマージュシーンは是非劇場で確認を!耳もよく澄ましてみてください。そして「シーザー三部作」でシーザーが唱えた教訓が本作でも生きていたことにも感激。完全に『聖戦記』の続編です。

 さらにCGIの進化に驚き。より一層猿の表情の変化が分かりやすくなり、鮮やかで綺麗な映像。近年、CGIのクオリティ低下が明確化されている映画界ですが、劣ることなくワンランク上にいけた本作は盛大に褒めたい。スタッフの努力の結晶でしょう。

 監督が言及していた通り、シリーズ未見の方でも楽しめる内容ではありますが、全シリーズ観てると何倍も楽しめるのは確実。シリーズファンは観るしかないでしょ。続編があってもおかしくないラストではありましたが、「シーザー三部作」の二番煎じになりそうな雰囲気で不安と楽しみな気持ちが混合しています。「共存か、対立か」をテーマにするのは『新世紀』で攻略済みなので、それ以外の意外な路線で突き進んでほしいです。もちろん期待。

 本当に『聖戦記』から300年後なんか??疑いたくなる演出があるが目を瞑るしかない。

2024.5.10 初鑑賞
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