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猿の惑星/キングダムのryo0587のレビュー・感想・評価

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)
3.0
楽しめたが、良く言えば手堅い作り、悪く言えばフツーの作品。しかし後述する点は素晴らしかった。

最新技術で描かれるエイプの細かい描写は相変わらず凄い。

聖書よろしく主人公ノアが一族を洪水から救うお話。

猿の物語を映し鏡として、人類の本質について語っているのはこのシリーズの伝統を引き継いでいて良かった。
特に今回も人間の傲慢さと狡猾さについて踏み込んで見せつけられる。

ノヴァ改めメイがその象徴で、目的のためには自分に友好的なエイプを利用するし嘘もつき、同族も手にかける。
この落日の時代にあっても人間の復権を信じて疑わず、人類の技術は人類のもの、猿には渡さんと言って憚らず、渡すくらいならと王国ごと海に沈めてしまう。

あまりに傲慢、不遜、不寛容の塊に僕の目には映った。

このまま復権しても、事実その兆しがラストで明かされるのだが、また同じ過ちを繰り返すのでは?と危惧する危うさを体現している。

この役引き受けるのも覚悟が必要だっただろう。女優さんの勇気を讃えたい。

人間とは分かり合えない、シーザーの教えは正しかったのか?というノアの葛藤は苦々しいと同時に「ホントすんません…」という気分になった。

ただ、メイの立場からすればああせざるを得ないのも理解できる。人類復興が自分の双肩にかかっているんだし、僅かでも可能性があるなら、その使命に殉ずるだろう。

人類からしたら美徳であるはずの行動が、エイプからすれば傲慢・不遜に映る。

このように猿の目を通じて人間を客体化してその行いを眺め、考えることができるのは本フランチャイズの醍醐味だと再確認した。

両者に正義があり、どこまでも並行線であるために分かり合えないのは、この作品の伝統的テーマを体現していて良かった。

惜しむらくは、ビジュアルに新しさがほとんどないことか。大体今までにやり尽くされているのが悩ましいところ。
その中で、マスクを被る猿のルックは良かった。
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