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猿の惑星/キングダムの教授のレビュー・感想・評価

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)
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大作映画としては、監督のウェス・ボールは職人的な、立派な仕事をしたと思う。
「猿の惑星」という規定のフォーマットで、過去作のオマージュや、それらを踏まえた物語の展開など随所に工夫が見られる点などは好感の持てる作品。
であるには違いないが、一方で全体が凡庸で類型的な演出が目立つという退屈さも大きくある。

「20世紀スタジオ」製作とはいえ、ディズニー傘下という匂いも強いのかもしれない。非常に王道的な大作然とした良し悪しが既にある。
確かに主人公のエイプたち、人類滅亡後の世界のディテールは映像的にも素晴らしい。
ほぼほぼ実写作品というよりは、リアルなアニメーションを観ているかのようなテクノロジーの素晴らしさは見事。

一方で、作品のテーマが詰め込み過ぎもありぼんやりしてもいる。
前作までのシーザーのもたらした「教え」が時間の経過によって風化し、一方でプロキシマス(ケビン・デュランド)によって捻じ曲げられたその「教え」と「ローマ帝国」時代の治世を人間から学ぼうとする「野蛮さ」、もはや人間不在の世界で結局は「エイプ」同士が争うことになる難しさ。
などは綿々と語られ続けきた物語の焼き直しにも見える点が残念。

一方で主人公のノア(オーウェン・ティーグ)が「シーザーの意志を継ぐ」という展開が仄めかされるが「エイプはエイプを殺さない」という思想を顧みることなくプロキシマスを殺すし、その教えすらラカ(ピーター・メイコン)のあっけない途中退場によって伝え切っていないまま進行するのも消化不良。
またアナヤ(トラヴィス・ジェフリー)とスーナ(リディア・ペッカム)との関係性のステロタイプさや特に最初の「鷲」の卵の件は退屈。

加えて、いかにも「続編」を匂わせるノヴァ(フレイヤ・アーラン)との友情と分断についてはスリリングな展開が期待できなくはないが、もはや一遍で完結できない物語を延々見せられるのもゲンナリはする。

ただ中盤の「マンハント」のシーンは気合入っていてテンションが上がったので嫌いではない。
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