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沈黙の自叙伝/自叙伝の440のレビュー・感想・評価

沈黙の自叙伝/自叙伝(2022年製作の映画)
4.8
立場の強い者と弱い者
信じたものが間違いだった瞬間

カサヴェテスの暴風雨作品「ラブ・ストリームス」直後にもう一本観たくて鑑賞。
予備知識ゼロ、たまたま時間がぴったりだったので鑑賞しましたがすごい作品でした。

インドネシアの田舎の村で権力を持つリーダーに代々仕えている家族。
兄はシンガポールに出稼ぎに行き、父は刑務所にいる事から父の代理で権力者プルナの付き人として働く事となった青年ラキブ。
親身になって可愛がってくれるプルナだったが、ある事がきっかけでラキブに不信感が生まれる。

過去から続く権力による抑圧が根強く残っており、その環境下で育ったラキブは今まで見てきたもの、体験したものが当たり前と思っているんだと思う。
プルナに従い一生懸命働くラキブが捕まった父親と面会する際に言われた「信じるな」という言葉がこの後めちゃくちゃ効いた展開になっていく。

正直どんな展開が待ち受けているのかハラハラで、ミステリーのような犯人探しと徐々に登場人物の本性が現れはじめるあたりからは瞬きを忘れ、食い入るように観てしまった。
そして自ら正しいと思える行動を取った結果、追い込まれていくラキブ。
特に結末のゾクっとする感じと作品から感じるメッセージが心にブッ刺さった。

2022年の東京フィルメックスで最優秀作品賞を獲得したのも頷ける秀作。
インドネシアの国事情や未来を奪われている若者たちの事を考えると自分の生活が本当に有難いんだなと実感。

とても重たくハードルの高い作品に感じますが、いざ観始めると分かりやすくグイグイ引っ張ってくれる魅力溢れた作品ですので、こちらもまた全力オススメしちゃいます。
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