みほみほ

NOCEBO/ノセボのみほみほのレビュー・感想・評価

NOCEBO/ノセボ(2022年製作の映画)
3.9
🐕️🐥🐞2025年10本目🐞🐥🐕️(字幕)

無意識の上に成り立つ、見えざる搾取の連鎖が生んだ悲劇×呪い。

人間が視覚的に気持ち悪いと思うものを具現化するのが抜群に上手いし、冷静に見たら笑ってしまう巨大ダニですら最高の悪夢として成り立っているから素敵。(流し見した1度目はなんじゃこりゃ~ってなったけど…笑)

近年、心底不愉快にさせたり嫌悪感を煽ったり…と観ている側をただただ絶望の底に落としたいだけにしか思えない不条理系ホラーが溢れているけど、相手の過去を丁寧に交えつつ進行していく本作は一味違った見応えがありちょっと感動。

いや、感動なんて求めてないしとは自分もよく思うし…悲しみを思わせるホラー作品は割と多くて気分が向かない時はそういうホラーは受け付けない時もあるけれど…本作の設定やら言語の壁、立場の違い等ありとあらゆる要素が上手く成り立ってて、よくあるホラーとはまた違う恐さが楽しめたので私は大満足。

同じくお腹を痛めた母でもあまりにも立場が違い過ぎる現実や、搾取が悪意からではなく無意識に向けられている残酷さ等…気付かぬうちに見過ごしてきたものが誰かの命を奪っているやも知れぬ恐ろしさを痛感させられた。

自分が通販で何かを安く手に入れた時、安いだけあって裁縫汚いな…なんて思うことが多いけど、その安さの裏でどんな労働条件で酷使させられているのか等想像したら、自分も全く無関係ではないなと思わされるし、コストを削りリスクを減らす行動が安全を遠ざけていく現実も恐ろしかった。

現実的な怖さだけでなく、ショッキングな光景がバリエーション豊かに味わえるのもとても良いし、家族間の微妙な関係性やらお手伝いさんが来てからの家庭内の怪しい流れなどが完璧で観ていて面白い側面もあり飽きない。

お手伝いさんを異質に描き過ぎていない分、真相に近付くにつれ感情が様々溢れる部分も良いし、エヴァ・グリーンの精神的に弱りきった姿も素晴らしいし、マーク・ストロングの良き夫だけど嫌味っぽいキャラクターや子供(ボブス)の繊細な目線とか表情一つ一つが印象的だったりとキャスト陣の安定感も素晴らしい。

夫目線から見る妻とお手伝いさんの怪しげな状況が特にツボで…マーク・ストロング演じる夫とインコのシーンなんかもTHE呪いで良き。

お手伝いさん役のフィリピン人の役者さんも素朴な感じと等身大なのが良くて、娘との写真館のシーンは微笑ましくて…切なくて…

それにしてもマダニの気持ち悪さときたら…血を吸うとか感染症をもたらすのを連想するから色んな意味で恐怖だった。

この映画は最初、ジャケットの美しい女性とその口からなにやらハミ出してる異物の気持ち悪さのアンバランスさに興味を惹かれたものの…ホラーは当たり外れが激しいので観るのを迷っているうちになんとなく再生してしまい…なんと先に結末だけ観て知っている上での鑑賞でしたが、きちんと観たら気持ちの入り方が全然違って期待以上に面白かった。

WOWOWオンデマンドで見つけるまで知らなかったタイトルだったので、これはかなりの掘り出し物でした。

『女神の継承』の余計なアメリカアクティブホラー要素を抜いて母の悲しみと執念を足して、現実味まで加えてきた上に視覚的に天才な感じ。
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