悶

M3GAN/ミーガンの悶のレビュー・感想・評価

M3GAN/ミーガン(2023年製作の映画)
4.2
【鑑賞のきっかけ】
制作の一人、ジェームズ・ワンは、衝撃的なラストが評判を呼び、シリーズ化された「ソウ」の生みの親であり、そのホラーとサスペンスをミックスしたような作風が気に入り、新作が出るたびに鑑賞してきました。
本作品は、劇場鑑賞は逃してしまいましたが、動画配信されているのを発見し、鑑賞してみることとしました。

【率直な感想】
<古くて新しいテーマ>
SFの世界では、映画でも小説でも、人間が作った機械が、人間に刃向かってきて、殺人を犯したり、反乱を起こしたりという作品が多く見受けられます。
本作品のミーガンは、おもちゃの人形ではありますが、AIを搭載した最新技術によるもので、一種の高性能のロボットと言えるでしょう。
このロボットが、次第に人を傷つけ、命を奪うようなところまで発展していくというホラーテイストで描かれたSF作品であり、興味深く鑑賞しました。

自分を作ってくれた「人間」の命を奪うという設定に対しては、様々な作品で「何故か」という議論がされているのですが、私が納得しているのは、「人間に近づき過ぎたから」というもの。
つまり、本作品で言えば、ミーガンは、AIが搭載されていて、植え付けられた知識を発展させて学習していく機能を備えており、どんどん人間の思考回路に近づいていきます。
一方、この地球上で、同類を意図的に殺してしまうのは、ホモ・サピエンス=人間だけです。
ロボットは、人間そっくりになっていくことを目指して作られているので、思考回路が人間らしくなったなら、人殺しも行うようになってしまうだろう、という論法です。

本作品では、とても興味深いシーンがあります。
それは、人間への攻撃を始める前に、ミーガンを作った研究者のジェマに「死」について問う短いシーン。
ミーガンは、交通事故で両親を失った少女、ケイディを守ることを使命としていて、彼女との会話の中で、「両親の死亡」のエピソードを知ったものの、生物でないことで、「死」というものを理解できないので、ケイディの叔母でもあるジェマに質問したと思われます。
しかし、ジェマは回答を避けるだけでなく、質問そのものも拒絶してしまいます。

その後、ミーガンが「死」について、どのように理解したのかは、作中で示されませんでしたが、「人を殺す理由」については、ラスト近くになって、自分の考えを口にするシーンがあります。

【全体評価】
本作品は、エンタテインメント作品なので、こうした「死」や「人間はなぜ人間を殺すのか」について考えなくても十分に楽しめる作品となっています。
でも、AIが身近になり、今後はミーガンのようなロボットも登場してくる未来が見えてきたこの時代、人間がこうした倫理観や道徳観に根ざす事柄について、機械に対して、どのように教え込んでいくのかが重要だということを、本作品のメッセージに含ませているように感じ、<古くて新しいテーマ>として、論じてみました。
エンタテインメントとしての面白さは、十分に感じられる仕上がりとなっていたと思います。
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