悶

MINAMATAーミナマターの悶のレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
4.5
【鑑賞のきっかけ】
公開時から気になっていた本作品。
動画配信が始まったという情報を得て、早速鑑賞してみました。

【率直な感想】
<冒頭のシーンに注目>
MINAMATAのタイトルに続き、冒頭のシーンは、子守歌を口ずさんでいるかのような、母親と、その子どもらしき姿が、ほんの30秒くらい流れるのですが、ここは、しっかりと頭に刻んでおくことをお薦めします。
ラスト近くになって、大きな感銘を受けることになるでしょう。

<公害は70年代、国民全体の不安の象徴でした>
本作品の時代設定は、1971年なのですけれど、この年には、日本製のある映画が公開されています。
その題名は、「ゴジラ対へドラ」。
水俣病というのは、作中でも触れられていますが、チッソ株式会社が放出した、工場排水の中に、水銀が混ざっていて、その水銀を摂取した魚を食べた人や、その人から生まれた子どもが、水銀中毒となってしまったものです。
70年代当時は、この水俣病以外にも、四日市ぜんそくや、イタイイタイ病など公害病が多発。
こうした公害病の発生以外にも、工場の排水で海が汚染され、有機物の泥が堆積する事態が発生しました。この堆積物は「ヘドロ」と呼ばれ、「へドラ」は、この「ヘドロ」を題材としたもの。
つまり、この時代は、「公害」による環境汚染の恐ろしさが、子どもたちの間にも伝わっていて、この環境汚染がどこまで広がるのか、国民の多くが不安を感じていたことと思います。

<環境汚染は人類の大きなテーマ>
本作品では、水銀を工場排水として流していたチッソ株式会社(これは、実名です)が、巨悪の根源として描かれていますが、こうした工場排水の放出に規制をかけなかった政府にも責任があるのではないかと思います。
折も折、2023年8月現在、福島第一原発からの処理水の放出が始まり、福島産の海産物が風評被害で売れなくなるのでは、というニュースが駆け巡っています。
その安全性の有無についての意見は差し控えますが、少なくとも、あの水俣病などの公害の時代の教訓を活かした万全な安全対策を取る責任を政府は十分に果たしてほしいと考えています。

なお、本作品では、エンドロールの途中、何枚もの写真が映し出されます。
そこには、日本以外での、環境汚染による被害状況を伝えるもので、環境汚染は、人類の大きなテーマなのだということを実感させられました。

【全体評価】
最後になりましたが、主人公のフォトジャーナリストを演じたジョニー・デップと、チッソ株式会社の責任を追及する団体のリーダーを演じた真田広之の両者の演技には、目を奪われるものがありました。
水俣に住む人々を襲った悲劇的な事件を、私たちは決して忘れてはいけない、というメッセージが強く伝わる良作でした。
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