悶

ボーンズ アンド オールの悶のレビュー・感想・評価

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
4.0
【鑑賞のきっかけ】
劇場公開時には注目していませんでしたが、最近動画配信が始まった作品の中でも注目を集めていることを知ったことと、ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞していることに気づき、鑑賞してみることにしました。

【率直な感想】
<これまでにないジャンルの物語>
私が視聴している動画配信では、本作品の紹介中、ジャンルとして「ホラー・ロマンス・エキサイティング・緊迫」と書いてあるのです。
人を食べたいという欲求を抱いた人物を描いた作品なので、「ホラー」というのは何となく分かるけど、「ロマンス」とは一体?
公式ホームページでは、「誰も見たことのない純愛ホラー、誕生」とあります。
「純愛ホラー」ならば、確かに見たことのない作品です。
そして──その宣伝文句に偽りはありませんでした。
ただ、「ホラー」とは言っても、恐怖をかき立てるような描写は殆どなく、使用されている音楽も、どちらかというと美しい音色のものでした。
「人を食べたい」という特殊な欲求を持った人たちの「恋愛」を描いた作品ということで、メインテーマは、「恋愛」のような気がしています。

<ロードムービーとして>
他のレビュアーさんも指摘していることですが、本作品は、ロードムービーでもあります。
少女マリンは、人を食べたいという欲求に悩んでいたところ、離れた土地に、母親がいるらしいと気づき、母親探しの旅に出ます。
そこで、同じ欲求をもつ青年リーと出会い、旅を続けていく…。
本作品では、冒頭、マリンの住む街を映し出す際に、「VA」というアルファベット2文字が大きく表示されます。
何これ?と思った瞬間に、「バージニア州」の字幕が。
そして、彼女が旅立ち、新しい土地に到着するたびに、アルファベット2文字が登場し、「○○州」という字幕が出ます。
ずっと気づかずにいたのですが、アメリカの各州は、アルファベット2文字の略称があるのだそうです。
確かに、ニューヨーク州は、しばしば「NY」と表記されていたりします。
でも、全州に略称があるとは知らなかったです。
蛇足ですが、途中「KY」と表示された際、思わず「空気読めない」と頭に浮かんできてしまい、「ケンタッキー州」と字幕が出た瞬間、「そうか」と妙に納得していまいました。

【全体評価】
人を食べたいという欲求に悩む主人公が、同じ悩みを持つ青年と知り合い、恋に落ちていく物語。
「純愛ホラー」という誰も見たことのない作品世界に、強い感銘を受けた作品でした。
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