宇尾地米人

銀平町シネマブルースの宇尾地米人のレビュー・感想・評価

銀平町シネマブルース(2022年製作の映画)
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小出恵介さん、吹越満さん、宇野祥平さんと川越スカラ座が共演することで、ここまで堂々と映画館が舞台となる作品も久しぶりかと思います。主人公が映画人と出会い、映画館で働くことによって、映画ファンでも普段なかなかうかがい知れないような、映画館の内側を垣間見れます。

とはいえ、お仕事のドキュメンタリーではないので、業界事情やお勤めの精神について深く踏み込んでいくわけではありません。城定監督といまおかしんじ脚本のテーマは映画館が内包する人間模様。愉快なコメディとして描き切らず、人生を正直に映すため、それぞれの込み入った事情が影を落とすところも感じさせますが、根本である映画のタッチは柔くさっぱりしたもの。映画と映画館に親しんでもらう作品で人を疲れさせてはいけないという製作の気概を感じます。

いま全国の映画館、ミニシアターが苦境に立たされていますが、映画ファンや地域の住民が映画館を支えるのか。映画館が人生の支えになるか。映画とは何とも知れない、いいもんですが、一筋縄ではいかないもんだと思いました。映画とは人々の喜怒哀楽とともにあり、これからも人生に沁みこんでいくものであってほしいもんですね。
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