MrOwl

ポーカー・フェイス/裏切りのカードのMrOwlのレビュー・感想・評価

4.2
本作はポーカー・フェイスというタイトルですが、ポーカーゲームでのスリリングな展開と他のサブストーリーが絡むのかな、と思いきや、ポーカーよりも、「ポーカーフェイス」の方がテーマなんだと感じる映画でした。ポーカーをきっかけにしてネットとITで事業を成功させたラッセル・クロウ演じるジェイクは、巨万の富を築いています。高層ビルのオフィス、幾つもある高級な時計、何台もある高級外車、愛する娘。美需品、とくに絵画のコレクターでもあるようです。でもどこか寂し気で影のある表情。そんな表情が目に留まった若手の女性画家から、コンクールに応募する作品として肖像画を欠かせて欲しいと頼まれます。許可を出しますが、「完成したらあなたに見て欲しい」という言葉には「無理だ」と答えます。理由が気になるところですが、それはジェイクがこれからしようとしているある企てに関係しています。それぞれ大人になり、作家になったり、政治家になったり、身を持ち崩してしまったりした幼馴染をなぜポーカーナイトに招いたのか。一方招待された幼馴染たちもなんだか訳ありの様子です。ジェイクの企ての理由や参加した友人たちが抱えるものは?そしてそのポーカーナイトに忍び寄る影は?テンポも良く徐々に明かになる物語の全容に惹きつけられ、最後はホロリと泣かされる展開。やや地味な映画、とも言えますが、派手さを抑えた、抑制の効いた大人な映画だと思いました。良作です。
また、本作の舞台はアメリカではなく、オーストラリアですが、それがセリフではなくカットで示されるのは良い演出でした。思えばラッセル・クロウは出身がニュージーランドでしたね。両親は欧州にルーツを持つようでノルウェー・アイルランド、スコットランド、ウェールズの血を引いています。監督・脚本で臨んだ本作の舞台を馴染みのあるオーストラリアにしていることで、ラッセル・クロウの思い入れの強さが伺えました。少し垂目気味で優しそうでもあり、切なそうでもあり、憂いを称えた表情が印象的で、それが暴力性や狂気を含んだ眼差しになることもあり、グラディエーターでのアカデミー主演男優賞受賞、ビューティフルマインドでの英国アカデミー賞 主演男優賞受賞に繋がっているラッセル・クロウ。6歳のドラマ出演から59歳まで、キャリアは53年。インサイダー、シンデレラマン、ワールド・オブ・ライズ、消されたヘッドラン、スリーデイズ、ノア約束の船、パパが残した物語、ナイスガイズ!、マン・オブ・スティール、ヴァチカンのエクソシストなど面白い作品で主演から脇役までこなす俳優さんですね。本作で演じた億万長者は、これまでの作品では見なかったキャラクターだったのでその点も新鮮で良かったです。
MrOwl

MrOwl