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Dr.パルナサスの鏡のsensatismのレビュー・感想・評価

Dr.パルナサスの鏡(2009年製作の映画)
2.5
2020/137
この映画で総合的にいちばん悪い奴がいるとしたら、賭けを誘う悪魔でも慈善活動の裏でこどもの臓器移植をしていたトニーでもなくて、死と引き換えに娘を引き渡すことを快諾し負けると薄々わかっているのにその時の誘惑に打ち勝つことができずに賭けに乗っかる短絡的な欲に弱いDr.パルナサス博士だよな。
全て自分の心の弱さが起因で問題が発生しているのに、現実的な解決は他人任せだし、目の前に聳えるものを直視して認めることもできないし、その渦に巻き込まれた娘とも向き合うことができない愚かな爺よ。
でも人間ってそういうもんだよね。
正しさを持ち合わせることない弱い爺に嫌悪するが否定することもできない。
一番ムカつくキャラクターだが一番可哀想になる。
「もうこれ以上選択をしたくない」と苦しげな博士には共感せざるを得なかった。
悪魔は別に欲しいものなんてなくて、賭けに勝つ負けるなんてのもどうでも良くて、結局博士を愛してたのかもなと思う。博士の愚かさとどうしようもなさを愛していた。

映画撮影中にヒース・レジャーが急逝したため、旧知の仲であるジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルがそれぞれトニー役を演じ、出演料は全額彼の娘に譲ったという逸話があるヒース・レジャーの遺作。
鏡の中のシーン以外は全て撮り終えていたので、急遽鏡の世界に入り込むと顔が変わるという設定に変更された。鏡はその人の想像力や欲望が世界としてひろがっているので、人が変わることは「なりたい自分になれる」と考えることができるから結果的に良かったのかもな。
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