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ベルリン・天使の詩のsensatismのレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
3.5
苦しみ、虚無、愛憎、愉楽、を傍で見届けるだけで手ごたえがない人生と、自分の行動がすべて応酬する人生、どちらが良いか?

天使には人生という概念さえないかもね

世界から返事がない代わりに苦しみがない人生と、世界の感触がある代わりに辛酸がつきまとう人生、どちらが良いか?

天使と人間
ソウルとボディー
死と生
無色と有色
死ななければ生きていない

「生きることは誠に苦しく辛い。世を呪い、人を呪い。それでも生きたい」
それでも生き続ける、という選択、という人間讃美

✴︎マリオンのガレージハウス内ベッドふもとに飾ってあった日本画は竹久夢二だと思った
✴︎天使の視点は白黒で人間の視点は彩色というコントラストが両者の人生観を表していてよかった
✴︎脈略があるようでない、とりとめのない人間の思案から思案へ天使が散歩する様子は、ヴァージニア・ウルフの『ダロウィン夫人』で用いられた「意識の流れ」的アプローチを映画化したものだと思った
✴︎ビルから飛び降り自殺した男を模して戦勝記念塔の女神像から飛び降りた天使の映像はドラマSPECで当麻がニノマエにビルから落とされるシーンの演出と一緒だったと思う
✴︎「子供は子供だった頃、腕はブラブラさせ、小石は川になれ、川は河になれ、水たまりは海になれと思った。子供は子供だった頃、自分が子供とは知らず、すべてに魂があり、魂はひとつと思った。子供は子供だった頃、何も考えず癖もなにもなく、あぐらをかいたり、とびはねたり、小さな頭に大きなつむじ、カメラを向けても知らぬ顔」
✴︎「私が私のことを話すなんて、よくない時よ。今みたいに。時が癒す? でも時が病気だったら? 人生、祈りに身をかがめてるのは平気。まなざしさえ同じなら。でもサーカスなしは寂しい。でも変ね。なにも感じない。おしまいなのに」
✴︎「つらい事は忘れる。出会った素晴らしい仲間は誰ひとり忘れない。いつも最後まで続かない美しすぎる夢。ようやく街に出て自分が誰か分かりたかったのに。いつもさめていて悲しいなどと思わない。やさしい愛の言葉を待ちくたびれて、それで国を出たのに。誰かが"今日の君がとても好きだ"と言ってくれたら。目を上げるだけで世界が見え、心にせまる」
✴︎「森で迷子の動物は自分が誰か答えられない。私も今ブランコ乗りでない──それしか答えられない。泣かない。泣きたくなんかない。よく起きる事じゃないの。思い通りにはいかない。むなしい」
✴︎「何も考えずにいること。ベルリン。異郷なのに故郷みたいな街。迷子にもなれない。どこへ行っても壁の街。3分間写真を撮ると他人の顔が出てくる街。そこから何かが始まる。いろんな顔。顔を見るのは好き。ウェイトレスの職ならある」
✴︎「今夜が怖い。バカね。半分は心配してても、もう半分の私は心配なんかしてないんだから。いかに生きるか。というよりもいかに考えるべきか。無知で、好奇心だらけで。考えがまとまらない。いつも誰かと話すみたいに考える。閉じた目の中でさらに目を閉じれば石だって生き始める」
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