今回は勝って「やったー!」で終わる映画ではない。
幼い頃の黒人仲間との確執は、大人になっても変わらず残る。
日本でも地方都市などでの暴力が支配する地域での関係とも共通するところもあるような気がするが、そういった若い頃に醸成された関係というのは、なかなか逃れられないしがらみとなる。
本作でアドニスが闘う最強の敵デイムは、かつてアドニスがティーンエイジャーだった頃のブラザー、兄貴だ。当時ストリートファイトのチャンピオンで、ボクシングのイロハを教えてくれたデイムが18年の刑期を終えて出所してきた。
デイムはなぜ刑務所に入らなければならなかったのか? アドニスとデイムの間に何があったのか?
IMAXカメラで撮ったというファイトシーンはリング内を縦横無尽に動きまくるカメラワークとも相まって迫力満点!
ただ、ボクシングの設定はマンガ的。
確かに、かつての『アポロvsロッキー』の時のロッキーにデイムを重ね「当て馬」として描くのは上手いけど、18年間、刑務所にいて出てきたばっかりの男が、いくら元ストリートチャンプとはいえ、プロデビュー戦でいきなり世界タイトル戦なんて、興行的にもありえないでしょ!
『ロッキー』は元々そうだけど、あんなに大ぶりのパンチならいくらでも避けられるし、カウンター合わせるのも簡単だ。だいたいヘビー級のパンチがあれだけクリーンヒットして倒れないわけないし。
でも、そんなツッコミどころがいっぱいあったとしても、ボクシング映画として最高に熱いしおもしろいことは保証つきだ。まあ、本当のリアルじゃなくて、ボクシング映画のリアルを追求してるわけだから、これでいいのかな。
最強の敵デイムを演じるジョナサン・メジャーズがいいんだ。主役を食うほどの存在感だ。本作は無事公開されたけど、逮捕されたり事務所を解雇されたり、ジョナサン・メジャーズ大丈夫かね? いい俳優だからマーベルのカーン役含めて今後が心配です。
本作が初監督となるマイケル・B・ジョーダン が言っているように、本作の核となる要素は「許し」。
アドニスが、デイムが、かつての親友同士雌雄を決し、過去のしがらみを乗り越えていけるのか?
今までの『ロッキー』『クリード』シリーズにはなかった切り口が光る、新たな傑作です。