真一

劇場版 センキョナンデスの真一のレビュー・感想・評価

劇場版 センキョナンデス(2023年製作の映画)
3.7
 シャツに短パン。手にスマホ。そんな出で立ちの不良おじさん二人が選挙戦に出掛け、各党候補にノーアポでマイクを向けて「一般国民への態度」を探るロードムービー。新聞やテレビが伝えないリアルな選挙風景を映し出すことで、日本の民主主義の在りかを明らかにした異色のドキュメンタリー作品です。

 面白かったのは、衆院香川1区の自民党現職候補・平井卓也陣営の排他的な対応だ。平井家は地元四国新聞の社主であり、絶大な権力を握る。その平井陣営の選挙スタッフが、短パン姿のダースレイダーとプチ鹿島に対し、ゴミを眺めるような視線を向けるのがリアルでいい。自民の大物政治家が、庶民をどう見ているかを如実に表していると思った。

 最初はフレンドリーに「維新はとんでもない政党だ。徹底的に戦う」と語ってくれた立憲民主党の菅直人元首相が、後に二人の質問から逃げるようになったのも興味深い。菅氏は、維新と協調したい泉健太ら立民幹部に、猿ぐつわを噛まされたのだろうか。「維新と闘わないのですか」と問いかける二人を、無視し続けるのだった。

 そもそも見ず知らずの有権者を寄せ付けない与党政治家。派手な打ち上げ花火を上げたにもかかわらず、都合が悪くなると口を閉ざす野党政治家。こうした「そんなこと、選挙戦には付き物だろう」という部分に光を当て、草の根視点で疑問を投げかけているのが、なんとも心地いいです。既存の新聞やテレビが絶対に伝えない「素顔の選挙戦」を、二人のカメラは見事に捉えています。

 今問われているのは、無味乾燥な選挙報道を続ける大手メディアの姿勢です。新聞社・テレビ局の記者諸君、いい加減、特権階級的な記者クラブ取材をやめ、一市民になって選挙を取材してくれ。そして選挙スタッフから罵声を浴びる様子を記事にしてほしい。本作品をみて、そんな思いを抱きました。
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