男やもめのベテラン映画監督で、疎遠だった娘ジョンスを連れてインテリアデザイナーとして活躍する旧友のヘオクが運営する四階建てのアパートへと訪れたビョンス。地下一階で酒を飲み交わしていたところ電話で外へ出た彼が、後に二階の料理教室で出会ったソニと三階で暮らし、やがて四階の作業部屋を使う日々を描いたドラマ映画です。
女優キム・ミニとの泥沼の不倫生活が一部で強烈な反感を買いながらも年二作と精力的に活動して作品を発表すれば欧米の批評家から軒並み称賛を集めるホン・サンスが、引き続き監督・脚本から撮影や編集まで手掛けた2022年公開の作品で、興行収入は低調と観客からの支持は得られずとも各国にいるファンや批評家から高評価を集めました。
発覚以降作り続けてきた主演キム・ミニでの彼女へのラブレターからの少しずつテーマを変化させていて、自らを投影させたかのような人物を主人公に人生における「変化」を綴って避けれぬ「老」を仄めかします。とはいえ些か驕りにも似たベテランの愚痴っぽさを感じる所もありますが、あざとくとも熟練の語り口で深読みさせる一作です。