Jun潤

シモーヌ フランスに最も愛された政治家のJun潤のレビュー・感想・評価

3.6
2023.08.01

予告を見て気になった作品。
ホロコーストによって収容された経験を持ちながら、女性初の欧州議会議長を務めた女性の壮絶な人生を描く伝記ドラマ。

1974年、男性議員の多くから反対される中、一人の女性大臣によって中絶を合法にする法案が可決。
女性の名はシモーヌ・ヴェイユ。
彼女は他にも刑務所の健康問題を始め、女性の権利だけでなく様々な社会問題に対して真摯に向き合い、立ち向かっていった。
いつしか彼女は、フランスで最も愛される女性の一人になっていた。
しかし彼女には、幾つもの眠れぬ夜を産む過去の壮絶な体験があったー。

ユダヤ人に対する凄惨な歴史と、70年代に活躍したシモーヌの、現代にも通じる女性の権利のための闘いを交互に描いていく。
シモーヌを演じた演者も3人に分かれていて、それぞれが異なった演技をしていながらも、全員がちゃんとシモーヌであることが伝わってくる演技をしていましたね。
特に序盤にあったフランスの男性政治家達の旧態依然とした女性蔑視の主張などからは、今も拭いきれていない風潮みたいなのもあって、身につまされる思いが込み上げてきました。
現代のことはよく分かりませんが、当時のフランス政府の、凄惨な過去に触れることや新しい価値観を受け入れることをタブーとしているような風潮も、臭いものに蓋をするというか、穴の底を這う人間を穴の外から見ているだけの、今の日本で生きているだけでも感じるようなことも作中には含まれていましたね。

前半ではシモーヌの活躍をテンポよく展開させつつ、過去に何かあったことを確信せざるを得ないようなトラウマに苦悩する様子も描かれていて、実在の人物を基にしていながらも、ドラマチックに仕上げられていたような印象です。
しかしなぁ〜前半がそんなに良かっただけに、後半は収容所の現実を描く他と似たような描写に振り切っていた印象で、今作の独自性が薄まってしまった気がしました。
Jun潤

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