このレビューはネタバレを含みます
全ての場面がポストカードのような、一枚の絵を見てるようだった。写真集、ポストカード集、イラスト集を見ているとふとその場面場面を映像として頭の中で描くことがあるが、誰かが描いたその映像を見ている感覚を体験した。もしくはテーマの決まった美術館の展示絵画を順に見ているときの気分に近いかも。もしかしたら知らないだけで有名絵画の構図のオマージュ、なんてものがあったりしたのかもしれない。ノルウェーの街並みや出てくるお家の小物、生活グッズなどもとても素敵だった。場面ひとつひとつに魅せられて、見終わった最後の満足感はすごかった。
カメラが固定なので背景の動きはほぼなく(運転のシーンくらい?)、人や動物がその中で動き、セリフもそんなに多くはない。それが独特で、とてもおしゃれで、だけど何気ない日常の空気感のある静けさを作っていたように思う。また、途中で「それ(福祉や政治など)を守るために戦わないのならバカだと思う」といったセリフが出てくるのだが、そうした静けさとおだやかなリズムが流れる映画だからこそこのセリフが強く響いている気がして、そこもとても好きだった。一方で緑化反対運動に対しては冷ややかな主人公カップルの会話シーンも描かれおり、一方ではマジョリティ、一方ではマイノリティ(レズビアンカップルであることなど)と我々にさまざまな「ポジション」があることを見せつけられて、どこか自分を省みなければというヒヤリを感じさせられた。
今年見た映画の中でも特に好きだったかもしれない。数年後にもう一度見たい。