かおり

愛と哀しみのボレロのかおりのレビュー・感想・評価

愛と哀しみのボレロ(1981年製作の映画)
5.0
恵比寿ガーデンプレイスシネマにて、デジタルリマスター版を鑑賞。
ジョルジュドンの美麗な舞をあの画質で観られて感激…。

個別のエピソードにも感情を揺さぶられたけれど、心に強く刻まれたのは「ひとりひとりは小さな存在である人間が、連綿と続く歴史を織りなしている」ということ。
誰も彼も、生き残りのそのまた生き残りなのだ。ひとつひとつの炎は、哀しいほどにあっけなく消えてしまうのだけど。

時代が移り変わっても、人間は同じことを繰り返す。それどころか前の世代より病んでいたりする。
前時代から見れば、生きて命があるだけで有難いことであるのに。不満はなくならない。他者への不信は募る。分かり合えないと殻にこもる。
どれほど自然科学が発達したって、みんなが幸せになんてなれないのだろうか。

この映画は、母が公開時に観ていた作品。
そのころわたしなんて影も形もないわけで。
そんな事実がこの映画のテーマにも通じているような気がして。
今観られてよかったし、これから先の世代の人々にも観られ続ける作品であって欲しいと切に願う。

ラストのエッフェル塔の前のシーンは圧巻。
戦時中様々な立場だった人々やその子孫が一堂に会し(彼らはその自覚などないのだが。そしてグローバル化と言われている今、東京だってそういう地であるのだ)、心をひとつにする。
そんなシーンを観た翌朝の、パリでのテロのニュース。

人類の歴史はまだまだ続くであろう。
しかしそれが不幸の歴史にならないよう、ただ願うばかり。
かおり

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