マミーに続く2本目のグザヴィエ・ドラン映画鑑賞。
愛について、複雑な形をとりながらもまっすぐ問いかけた作品。
ロランスからすると、男であれ女であれ愛することに変わりはない。
でもフレッドにしてみれば、愛していたのは男のロランス。だと思っていた。
傷つけ合い絡み合い、近づいたり離れたりしながらも、愛は消えない。どうして愛しているかわからなくても。
ドランの人間に対する観察眼はほんとうに鋭い、と思う。
美しい映像の数々はただそれだけでも私たちに脳を醒ますような刺激を与えてくれるけれど、ドランはそこに甘んじることがない。
あの若さで、こんなにも微妙な人間関係の心理を鮮やかに描き出すことができるなんて。
奇抜だったり過剰に装飾的に思える演出も、あくまで人間の複雑な心理を表現するための手段であり、綺麗なだけで中身のない映像とは一線を画している。
才能とはこういうものなのか、とただただ感服する。
作り込まれた美と偶然の美、人間の自然そのままの美…ドランの映画はそれらが混ざり合っているところが心地よい。どれかだけでは息が詰まるから。
わたしがドランの美の哲学を感じる部分としてとりわけ好きなのは、ファイブ・ローゼズの宮殿のような空間、虚飾、でも極めて人間的な愛。フェデリコ・フェリーニに通ずるものがあると思った。
美しさだけでなく、台詞や言葉も印象的なものが多い。
「陛下、革命です」「エッケ・ホモ」「ne me quitte pas」「変身」etc…
などなど、22, 23歳の監督が作ったとは思えないような歴史的、宗教的、文学的エッセンスがちらりと効いてるのも深みを増しているように感じる。
そして、あれだけ様々な手法をとりながら場面が進行していったのに、ラストシーンのシンプルさ。そうきたか。泣いた。
それにしても、一瞬映るドランの美しさといったら!たった1秒ほどのカットなのに、言及せずにはいられない。
容姿も含めて才能なのか。