かおり

あの日のように抱きしめてのかおりのレビュー・感想・評価

あの日のように抱きしめて(2014年製作の映画)
3.8
強制収容所から帰還した妻(負傷していたので整形済)に気づかない夫。妻に「似ている」ことを理由に、死んだと思われている自分の「遺産」を手に入れる企てに協力させられる「妻」。

数年連れ添った夫に自分だと気づいてもらえないなんて、戯曲的でありえないことだとも言えるかもしれない。
顔が多少元のようではなかったとしても、髪やにおい、仕草で普通はわかるだろう、とたしかに思う。

それも、愛していたならなおさら。
だけど、愛していたからなおさら。

少しの違いにも気づいたのかもしれない。
顔の造作の1ミリの違いだって、見分けられたのかもしれない。

夫は強制収容所から帰って来ない妻の面影を、日々街角で追い求めていたのかも。
そして似た女性を見かけるたびに、妻ではないことに肩を落としていた…
もしかしたら、そんなこともあったのかもしれない。

観終わったときは、ひどい夫だなぁと思った。でもしょうがない、そういう時代だったんだ、わたしたちが裁けることなんてないんだ、と。
でも鑑賞から数ヶ月経ったきょう、ふとそんな考えが浮かんだ。

実際は上記のようなロマンスなんてなくて、ナチスに妻を密告したのも夫かもしれない。
ほんとうのところは何もわからない。わからせてくれない映画。

スピーク・ロウが響く。
かおり

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