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ゴジラ-1.0のfujisanのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.6
良いところも、悪いところもたくさんあったゴジラでした。

ゴジラは庵野秀明監督のシン・ゴジラが一番好きなのですが、どうやらあの作品は歴史あるゴジラファンの界隈では異端の映画と言われているようで、そういう意味では異端のゴジラファンなのかもしれません。

また、一応、平成ゴジラ以降は全て観ているのですが、レビューを書くほどには内容を覚えておらず、かと言ってもう一度観るほどでもないっていう、ある意味ゴジラ初心者でもあります。

そんなわけで、「ゴジラ-1.0」を観てきたのですが、まず驚いたのが劇場満員だったこと。自分がマイナーな映画ばかり観ているからかもしれませんが、あらためてゴジラの持つ集客パワーを感じさせられました(グッズ売り場も盛況!)


■ ネタバレなし感想

本作ですが、レビューが賛否真っ二つなところが面白いなと思っていました。ということは、何らかの観点で賛否が分かれているんだろうなぁと。

私自身、山崎貴監督作品は苦手で、VFX感が薄い「海賊とよばれた男」は面白かったのですが、途中断念した作品も多く、なんとなく賛否が分かれるゴジラなんだろうなぁと。

ということで、その前提になりますが、以下の観点でまとめます(なお、ストーリーに触れる部分は後半ネタバレ編で)

・人間ドラマパートと、ゴジラパート
・ゴジラについて
・VFXについて
・俳優について
・主観ゴジラか、客観ゴジラか
・まとめ


□ 人間ドラマパートと、ゴジラパート

本作ですが、朝の連続テレビ小説的な『人間ドラマパート』と、VFXによる『ゴジラパート』にはっきりと分かれ、思っていたよりもかなりドラマのパートが多かったという印象です。

そして、正直、ドラマのパートが面白くなかったし退屈でした。特に前半40分ぐらいはまでかなり退屈で、最近忙しかったこともあり、ゴジラではなく眠気に襲われてました。。

銀座のシーンぐらいからはようやく面白くなってきたのですが、その後も度々挿入されるドラマのパートは馴染めませんでした。


□ ゴジラについて

まず、ゴジラの大きさが小さい。形態としてはローランド・エメリッヒ版とまではいかなくても、「ジュラシュックパーク」のTレックスっぽいというか、直立型とトカゲ版の中間という感じ。

海を泳ぐ姿は海イグアナっぽく、人間を補食しに来るゴジラに対して小さい船で戦う姿は「ジョーズ」っぽくもありました。大きすぎるゴジラは神の化身のように見えますが、それよりは人間VSゴジラの恐怖感が感じられる大きさであり行動、という感じです。

物語の中のゴジラとしては、今回、完全に悪役のゴジラであったことと、ゴジラを倒す魔法のアイテムみたいなものが出てこず、創意工夫で何とか戦うんだってところが、とても良かったと思います。

あとは音楽!ゴジラのテーマの始まるタイミングは完璧だし、ちょっと感動してしまいました😊


□ VFXについて

VFX大好きな山崎貴監督だけあってVFXが多用されていたのですが、思ったよりも良かったという印象です。ただ、良かったシーンと酷かったシーンにはっきりと分かれていました。

良かったのは、海(船)とゴジラのシーン、ゴジラ単独のシーン(遠景・近景)、そして空(戦闘機)とゴジラのシーン。特に海のシーンは素晴らしかったです。

一方で、人間とゴジラが合成されるシーンは残念な印象で、特に手前に人間が居て奥にゴジラが居る人間目線のローアングルシーンは、明らかに人間とゴジラの間のつなぎが雑で、古い特撮を見ているようでした。

これはもう、洋画と比べたら予算が違うのでしょうがない。でも、しょうがないなりに何かやりようがあったのでは、とも思います。

そう考えると、ハリウッドVFXと真正面に戦わず、あえて昔の怪獣映画の特撮ミニチュア撮影を持ち込み、日本人が慣れ親しんだ着ぐるみのゴジラ感を残したシン・ゴジラのやり方は良かったなと。


□ 俳優について

これも、良かったところと悪かった所がはっきりと分かれていた印象です。

良かったと思ったのは、シーン少なかったですが安藤サクラさん、青木崇高さん、吉岡秀隆さん。そして、駆逐艦『雪風』艦長役の田中美央さんが特に印象に残りました。

メインの神木隆之介さんと浜辺美波さんはどうなんでしょうね。。個人的には、戦後のバラックの瓦礫の中で生活している割に無精ひげ一つ無いツルンとしたきれいなお顔立ちには違和感も感じましたが、ある出来事があってから後半の鬼気迫る演技はさすがだなぁと思いました。

気になったのは、全体的にオーバーアクト(オーバーすぎる演技)でセリフが薄っぺらく感じたことと、また、セリフが説明的すぎること。それから、主要キャストとそれ以外、エキストラの演技に差がありすぎなのでは、と。

事前のTV番宣などで、浜辺美波さんが台本のト書きだけで迫りくるゴジラの恐怖を演じるのが難しかったと言っていましたが、まさにそのあたりで、逃げ惑う群衆がゴジラを振り向くシーンで見ている視線の高さが合っていなかったりと、ちょっと厳しかった印象です。


□ 主観ゴジラか、客観ゴジラか

「シン・ゴジラ」は日米関係の政治劇とともにゴジラが現れ、あらためて日本というものを問い、観ている人に突きつける客観的な存在としての客観ゴジラ。

一方で本作は、自分が主要キャストの一人としてその場に居る臨場感を味わう主観ゴジラだったと思います。これはもう本当に好き嫌いの世界で、ディズニーランドやUSJのアトラクション好きの方にとっては最高のゴジラ体験なのではないかな、と思いました。


□ まとめ

敗戦直後の日本を舞台にしたのは良かったと思いました。戦場で散ることが美徳とされた時代、復員兵として帰国する辛さ。

生きて帰ってきたことが恥として見られる忌まわしき時代から現代に、生きなきゃだめなんだよ、生きてることに意味があるんだよ、っていう、紛争が絶えない今だからこそ大事なメッセージが発信されていたのではないかと思いました。

映画としては上記の通り、良かったところと残念だった所がそれぞれたくさんあった印象で、個人的には、人間ドラマパートは2.9ぐらい、ゴジラパートだけだと3.9ぐらい、という感じ。


ということで、以下は観た人向けのネタバレ感想です。

























□ 隠喩(メタファー)としての「ゴジラ」

今回のゴジラはアメリカ(アメリカ軍)のメタファーですかね。太平洋戦争は広島、長崎への原爆投下で終戦しましたが、降伏がなければ東京へも原爆は落とされていたでしょうし。

今回のゴジラは東京へ上陸し、青く光る光線によって大爆発を起こす。青い光、爆心地へと吹き戻す爆風、キノコ雲、そして黒い雨と、まさに東京へ原爆を落としたわけで。

戦後間もないとはいえ、駐留していたはずの米軍の姿を一切登場させなかったのもゴジラそのものが米軍であり、この作品は当時の日本を改めて再認識し、今の価値観でアップデートさせる目的があったのではないかと思いました。


□ ストーリーで気になったところ

・ご都合主義がすぎる点 … そもそもゴジラという映画で現実味うんぬんというのはナンセンスなのですが、大混乱の銀座の群衆の中で妻を発見出来た敷島(神木隆之介)や、ミッション・インポッシブルばりに列車の中で生き残り、原爆並の爆風の中でも生き残っていた典子(浜辺美波)最強やん、って思いました。

・最終決戦、ワダツミ作戦 … 感動的でしたが、船が集結するところは「ダンケルク」だし、みんなで力を合わせて~は「ガンダム 逆襲のシャア」、「エヴァンゲリオン」のヤシマ作戦でした。こういうの、日本人の琴線に触れるんですかね。

・エンディング … 個人的には、無理やりハッピーエンドにしなくても良かったのでは?と思いました。さすがにあの爆風の中であれだけの怪我で済んでいたのは無理がありすぎるし、パラシュートで生き残り、子どもと二人で生きていく、ぐらいで良かったんじゃないかなと思いました。


□ 雑感メモ

・思い出したのは、戦後28年ぶりに帰還した元日本兵、横井庄一さんの『恥ずかしながら 生きながらえて帰ってまいりました』 という言葉。残念ながら戦争が人に与える影響の大きさは今も続いているんですね

・今回戦後ということで、戦艦高尾や駆逐艦雪風、前翼機震電など、実際に存在した歴史から引用したのは嬉しかったです。特にかなりマニアックな震電。前翼機は押井守監督の「スカイ・クロラ」にも登場していたことを思い出しました。

VFXでもかなりマニアが喜ぶ描写があって、旋回する時に太陽光がキラッと反射するシーンなどは、今すぐにでももう一回観てみたいです。

・銀座で逃げ惑う群衆の中一人として、橋爪功さんがカメオ出演してましたね。ドラマVIVANTや映画「沈黙の艦隊」など、急にチョイ役で出演されていますが、なにか深い意味があるのでしょうか・・

・同じく俳優で気になったのが、佐々木蔵之介さんのオーバーアクトでした。おそらく監督の演出だと思いますが、芝居掛かったオーバーな演技と、全てセリフで状況説明してしまうのはどうなん?ってずっとノイズとして引っかかってしまいました。


以上、取りとめなくてすいませんでした。

って、めっちゃ評価高いですね。。




『この国は、いのちを粗末にしすぎた』
『許しちゃくれないってわけですか』
『俺の戦争が終わってないんです!』
『この戦いは、死ぬための戦いではない』
『小僧、戦争に行ってないっていうのはな、幸せなことなんだぞ』
『浩さんの戦争は終わりましたか?』




2023年 Mark!した映画:310本
うち、4以上を付けたのは34本 → プロフィールに書きました
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