Demoitu

ゴジラ-1.0のDemoituのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.4
日本のVFXといえば、山崎貴監督。
戦後、敗戦し全てを失った日本に更なる厄災が襲いかかる。


ゴジラ映画は幼い頃に何本か観たのとシンゴジラを観た程度で特にファンという訳ではなく、何気なく鑑賞してみたが思いの外良い映画で、満足。

Dolby atmosでの鑑賞でゴジラの鳴き声が耳を塞ごうかと思った位大きく、迫力が凄かったのも良かった点。


戦時下〜戦後という状況下、敗戦国として国力は下がり、あらゆる武装も解かれた状態にゴジラが襲いかかる。
その何もない状況から見たこともない大型性物にどう立ち向かうのかというストーリー。

戦後80年の現代、戦争を実際に経験した人はほとんど残っておらず、戦争のあれこれは想像に頼るしかないというのが正直なところだろう。
この作品が好感が持てるのは戦争に行って帰ってきた事を誇る人間、特攻隊として出て行ったのに帰ってきてしまったという落ち目を感じる人間、戦争に結局行かずに済んでしまった人間がそれぞれ出てくるが、主人公は特攻機に乗りながら怖気付き帰ってきてしまった人間というところだ。
要するに現代の価値観に合わせて描いている、それはある種リアリティとは乖離があるのだろうが、美談として描く気はないという意志を感じた。
心情的には国の為に死んでこいと言われて、その通りにできなかった。怖かったし生きたかった。国という大きな主語にピンと来なかったという感情が現代を生きる人間とリンクするように設定されている。

最終的には戦う意志を示すのだが、その動機づけもストレートで分かりやすく、スッと入ってくる。

敷島が出会う子連れの女性・典子も同様だ。あの極限状態で、何の責任もない他人の子供を面倒見る甘さ、余裕。そんなことはしないでしょとは思う様なご都合展開なのだが、描きたい事を描くための割り切りとして気にはならなくなる。


これは戦争を描きたい映画ではなく、ゴジラを描きたい映画だからだ。
戦争という異質な状況下で、だからこそ起こる場面づくり、意味作りが明白。

ああ、これがやりたかったのねが上手に落とし込めていて、文句はない。

木造船でゴジラと戦う絵や、戦艦が沈没させられる場面、当時の銀座、作戦会議からその当時ならではの戦い方、敷島の決着などいい場面も多く見応え十分。

ゴジラ映画と侮ってはいけない!
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