Demoitu

ガタカのDemoituのレビュー・感想・評価

ガタカ(1997年製作の映画)
4.1
劣勢なのもが排除され、優勢なものだけが残る未来。劣勢に生まれたかった訳じゃない、優勢に生まれたかった訳でもない。それを決められたくなかった。


近未来、技術の発達により人間の遺伝子からその人の性質(臓器や目の良さ、病気のなりにくさ、寿命まで)がわかるようになり、遺伝子操作で子供の欠点を取り除くことが当たり前になった世界。

欠点のある人間はほとんどいなくなり、優勢な遺伝子だけが残されていく社会では、眼鏡を掛けているだけで異常者扱い。社会は健康で有能な人間を"適正者"、そうでないものを"不適正者"と差別しその血で区切られた壁は超えられない。

主人公の両親は自然に生きることを望み、遺伝子操作を遠ざけて出産。生まれたヴィンセントは虚弱体質で、寿命は31歳と診断された。不適正者として生まれたことの不都合を見た両親は遺伝子操作を受け入れ適正者として弟を産んだ。

適性者と不適正者の差は歴然で、ヴィンセントはすぐに背を抜かれ、眼鏡もかけていない弟に泳ぐ事でも及ばない。

しかしヴィンセントには宇宙飛行士になる夢があった。不適正者のレッテルの大きさに苦しみながらも家族(弟)とのケジメをつけて1人家を出る。

日雇い労働のような職を転々としいたある時、適正者として生まれ、能力通り素晴らしい人生を歩みながら交通事故で歩けなくなったジェロームと出会う。

ヴィンセントはジェロームの人生を借りて夢を叶える為に歩き出すが、、、





近未来の地球、道路は広く、建物は整然と建ち、清潔。街や空間の風景はとても美しい。しかし、その美しさが映画の序盤と終盤では異なる意味を持ち始める。

静かで、淡々と進む物語とは異なりこの映画のもつメッセージは至極単純だ。

現状に文句を言っても意味はない。過去にクレームを入れても何も変わらない。決めつけられた未来を変えるのは、抗う今しかない。

映画の序盤に美しく見えた街は、ヴィンセントと共に過ごして行くうちに、ただ無機質、無味無臭に感じ始める。無菌室の様な街並みは綺麗で清潔かもしれないが、歴史を殺し蓄積を感じさせない。個性がなく、経年する事で得られる美しさが全くない。端的に言えば薄っぺらく、ハリボテの魅力しかない。

だからこそヴィンセントは宇宙に夢を馳せたのだろう。

表面の綺麗な画作り、世界観。
そして、内側に沸る熱い想い。

そのコントラストが最高に美味い。

ジェローム、ヴィンセント、ヴィンセントの弟、そしてアイリーン。
それぞれの生い立ち、立場と想いの違いが見えるのも面白い。

これは観て損はなかった!
Demoitu

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