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ゴジラ-1.0のmeraのネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

【注意】ゴジラ映画に思い入れのない人間による超辛口長文感想記録です!

















映像はよかった。でもやっぱり、私が苦手な日本人男性監督の作品のよくないところがたくさんあって、時間がたつほどにあそこもここも……という感じでいらいらしてしまうタイプの映画でした。

ゴジラ映画としての完成度はよくわからないので触れませんが、一本の映画として観た時に家父長制に何の違和感も持たずにすくすく育っているマス日本人年配男性に脚本を書かせたら、まあこうなるよね…とみる前から思っていた予想が的中して残念。

日本の加害性、女性のリアルな人生など、自分の目に映る都合のいい世界を楽しく描くために、都合の悪いものにはフォーカスしないいつもの手法。フォーカスしない以前に、たぶんほんとうに見えてない。

世界で、日本で、いま何が起こっているのか、ほんの少しでも憂いていたら、こんな脚本にはならなかったはず。視野が狭すぎる。

せっかく日本が世界に誇る「ガッゼーラ」(はるか昔だけど海外のすごい田舎に住んでいたとき現地の少年にこう言われてゴジラのことだとわかるのにちょっと時間がかかった)なのに、なぜ、世界に通用する脚本にまで練りこむことをしないのか。毎回次こそは……と思って観るけど、また日本の大作映画に絶望した。

映画製作にかかわる人は、権力があるところにまともな女性(でなくてもいいけど、視野の広いまともな人)をいれてほしい。視野の狭い家父長制モンスターのおじさんだけで作らないで。

ビューティフルドリーマーで永遠の文化祭を実現するために、日常より負荷が何倍にもなったおそろしい量のケア労働を担わされているのに笑いにされているあたる母や、宮崎駿作品や新海誠作品などでは「存在しない」ことにされている、男性の創作に都合が悪い女性の人間らしい部分や、男性(戦争)の身勝手な加害性を描かず被害者としてふるまうムーブ。本作でも見事に全部描かれてました。ひょっとしてフォーマットとかある?? それが家父長制か……地獄み

女性と結婚「してあげる」のが一番のしあわせという価値観(現実ならのびたと結婚するわけがないしずかもそうだけど、今作の彼女もあのまま銀座で働いて、たくさんの経験と出会いを経ていたら未来の選択肢は変わったはず)。なにがあってもどんなときも(戦時下でも被ばくしても家族を奪われても)女性はかわいくて美しくて優しくて母性にあふれていて、どんな男に対しても黙ってつくして笑顔で見守ってくれるというファンタジー。そこから現実へのアップデートはいつまでもできない。

そんな男たちのかじ取りの結果、今、どんな現実が目の前に現れているのか、見えてますか?? 現実ではしずかは絶対に近所に住むダメ男ののびたとは結婚しないし、なんなら自立した結果、結婚に価値を感じなければ、誰とも結婚しない可能性もある。一緒に生きる人がいても、事実婚かもしれないし、相手は同性かもしれない。それは全部生き方の選択の一つで、結婚がイコール幸せではないように、どの選択も、未来の幸不幸は選択だけでは確約されない。素敵な女性がダメな男の面倒を見てくれて、ダメ男も含めてほとんどの男性が結婚できていたのは、社会システム的に女性に結婚しか生きるすべがなかった時代の話で、そんな時代はとっくに終わっている。家父長制が行動原理の男性にはそれが永遠にわからないみたいだけど。

新海誠作品を筆頭に男性監督の大作アニメ作品でもいつも思うけど、本作でも、アカデミーで視覚効果賞を取るほどの映像を作るのにかかるパワーや時間を考えると、脚本のダメさが際立って、砂上の楼閣にしかみえず、楼閣が美しいほど、残念すぎる。もっと土台をしっかり作ることに目を向けてほしい。

力があってまともな感性を持つ女性監督が撮っていたら、女性プロデューサーが入っていたら、少しは違っていたかもしれないけれど、脚本に力を及ぼせそうなクレジットは全員男性で、うん、わかってた……となりました。家父長制おじさんたちが何十年たっても、現実がここまでになっても、なにも変わらないなら、それをインストールしていない人たちに作り手を入れ替えていくしかない。なぜなら、家父長制おじさんは自分たちの見たいものしか見ないけど、そういう人たちは家父長制おじさんの話も聞くから。それが多様性だから。そのうえで家父長制おじさんもいる世界の地獄と希望を描くから。

ゴジラ映画なんだから、ゴジラさえかっこよければいいじゃん!というなら、ドラマパートはいらなかった。もっと徹底的にゴジラだけにフォーカスすればよかった。いくらでもゴジラのもっといいシーン作れましたよね。上記はもちろんドラマパートへの感想なので、せっかく世界に出せるゴジラ映画で役者さんもそろっていたのに、ほんとうにもったいないと思いました。

監督の女性への執着の発露が「結婚」なので、「身体」(ぴったりした服とか揺れる大きな胸とか口かみ酒とか)でないぶん、映像を見ている分にはあきらかな気持ち悪さはなかったけれど、「結婚」への夢見がちな男子ムーブは心にかなりのダメージ。女性の心身を加害しないと創作ができない日本人家父長制男性監督は、そういうことほんとうにまったく一ミリも理解する気もないんだろうな……ほんのちょっとしたセリフなどでも印象は変わるので、ほんとうに、家父長制脳ではない誰かの的確なアドバイスがあれば(もしくはそれがあったのならちゃんと取り入れていれば)少しはマシになっていたはず。何度も言うけど、今回もまた、ほんとうに残念な気持ちになりました。

次のゴジラ映画は、家父長制脳ではない監督に撮ってほしいなーと思いました
mera

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