ベルベー

名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)のベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

どう考えてもやり過ぎだが、それが良かった。「劇場版 名探偵コナン」へのニーズに全力で答えた一本。

脚本の櫻井武晴、黒の組織との相性がいい。今回はまさに水を得た魚。やたらポリティカルなわりに大味すぎる氏の特徴は「ゼロの執行人」「緋色の弾丸」では短所に思えたが、毎回恐ろしいわりにおマヌケな黒の組織(該当者1名な気もする…)と掛け合わせるとあら不思議。その大味さがチャームポイントに化けるのだ!

「BLUE GIANT」から2ヶ月でコナンと大忙しな立川譲の演出も良かった。色彩の鮮やかさが特徴的。ほんでもって推理は二の次!爆発!アクション!大爆発!「ダイ・ハード」並と言われたのは昔の話、今やそれを遥かに超える大惨事が巻き起こるコナンのお約束を見事にグレードアップさせて見せてくれる。

お約束。そう、本作はシリーズお約束を全部やるサービス精神が凄い。考えてみれば毎回「オレは高校生探偵工藤新一…」をやる必要はないし、阿笠博士のクイズタイムなんかなくても全く問題ない。それでもやるのだ。水戸黄門の世界である。

ミステリーとしての完成度を追求するなら、レオンハルトが真犯人を問い詰めるシーンなんてカットした方が絶対いい(だってレオンハルトの自殺がフェイクだって観客皆知ってるもんね)がそうしない。なぜなら、黒く塗り潰された犯人を出すのがお約束だからだ。

そもそもミステリー要素なんて随分前からそんな求めてないよねコナン。今回も犯人、出てきた瞬間に分かる人はすぐ分かるだろうし。あの人がここにキャスティングされてるってことは…って。それはそれとしてべらぼうに上手かった、犯人役の人。

ここまで接待されると居心地が悪くなることもあるけど、ことコナンに関しては自分は寧ろ好感を持てたな。観客それぞれがそのコンテンツにどういう向き合い方をしているかによるので、人によると思う。SWで同じことされたら怒ってる笑。

で、今回公開前に一部で荒れてた灰原哀周りなんですが…凄く良かった!「狂おしい」という言葉がしっくり来た。キスはコナン映画史上に残る名シーンだと思った、お返し込みで。そろそろ20年選手なのにこんな切なくてエモい「アイ」を見せてくれるんだから凄いよコナン。

お約束と言えば今回もおマヌケな黒の組織…もといジン。コナンの正体に気がついたものを殺してくれる逆MVP記録を今回も更新。おまけに「とんだクソシステムじゃねえか!」という新たなジン語録まで。スタッフ絶対狙ってやってるから悔しいけど笑っちゃった。あとウォッカ、盛大にやらかしてて気の毒になった。キール信用しすぎ、気が良すぎ。ヒロアカのトゥワイスみたいにならないか心配になるぞ。

赤井さんと安室さんはそこまで出張らず、でも美味しいところはしっかり持っていく理想的な出方。「ライ」「バーボン」呼びもエモかった。しかしバーボン自由に動きすぎだし赤井さんに至ってはロケットランチャーだし、相変わらずやりたい放題だなこの2人。

一方、本編に繋がるだろう風呂敷広げも結構あったので意外だった。意外とか言うのアレだけど。ベルモットがちゃんと怖いのでドキッとしたよ。そういえば子供の頃本当に怖かったなベルモット。もう1人怖い人いたんだけど…ジンって言う人なんですけど…。

あと、いつもより阿笠博士の活躍が多いのにグッときた。緒方賢一やっぱり凄い。その分おっちゃんは全然役に立ってなかったけど。去年体張って頑張ったから?

大味さについてはコナンじゃないと許されないレベルだし、「差別を許さない」連発するわりに犯人像どないやねんとか思うところは色々あるけど。コナン映画としてとても楽しめました。メインテーマのアレンジは必聴。
ベルベー

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