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怪物のayellowbirdのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.7
是枝裕和監督が、坂元裕二によるオリジナル脚本で描くヒューマンドラマ。音楽は、2023年3月に他界した坂本龍一が手がけた。2023年・第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞。
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きる。それはよくある子ども同士のケンカのように見えたが、当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく。そしてある嵐の朝、子どもたちがこつ然と姿を消してしまう…。

不都合な真実に口をつぐむ大人たちに嘆息する作品! ビル火災の夜から嵐の朝までの出来事が、母親、教師、子供の視点からそれぞれ描かれる。教師から暴力を受けた息子を守るため、学校にクレームする母親。子供の言うことが真実であれば、親として当然の行動なのだが、父親が亡くなった本当の理由を息子に明かしていないため、実は息子が母親と距離を取りたがっていることに気づけない。児童の親から誤解によるクレームを受けて、事を荒げないために担任教師の言い分を黙殺し、ただ謝罪を繰り返すだけの校長と教頭。子供の言い分を聞こうともせず、世間体を優先して、子供を何度も転校させる父親。
そんな大人たちを、子供たちは冷静に観察し、時にはすり寄り、時には真実に口をつむぐことで、保身を図ろうとする。
“怪物” とは、大人から子供へと受け継がれていく人間のエゴだと思った。
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