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怪物のMのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

この映画を「よかった」とか「面白かった」とか一言で済ませることはできなくて人に勧めるのが難しい。
ただすごく考えさせられることは確かでどうしても他人事にはできない、してはいけないような、作り話だけどそうじゃない、あまりにも現実とリンクしすぎた、どこかで見たことある光景と見えなかった誰かの心にどこか罪悪感を感じながら考えさせられる映画。
余韻とはまた違う気はするけど、いい意味で観客を必ずしも手放しに気持ちよくさせてくれない映画だった。

[鑑賞1回目の感想]

自分の理解が届かないものを「怪物」にすることで自分を正当化して生きてるのかな。

変わらなくちゃいけないことも当然あるけど、幼い彼らに関しては自分たちが何も変わらないこと、変わらなくてもいいことさえ知っていてくれたらそれでいいなと思う。そのまま生きててほしい。

靴を分け合うところで泣いてしまった

でもやっぱり何で飴舐めたんだろう
(あれ?彼女に飴貰ってたりしたっけ?今急に思い出したけど自信ない)

田中裕子さんすごい

湊の隣の席でいつもBL本を読んでいた女の子の視点がかなり重要だった気がするのだけど。(音楽室から湊たちが出てきた時も近くにいなかった?)

[鑑賞2回目、シナリオブックの感想]

1章のほり先生の見え方が変わった。
ずーーっと校長を見てる。

シナリオブックも1周読み終えた。
映画での校長先生の描写が確実に足りてなさすぎるのはどんな意図があるんだろう。あの脚本全部がもし本編に入っていたら印象全然違ったはず。

バラエティのドッキリ、ゲイ/オネエタレントのメディアによる描かれ方、BL漫画による現実のファンタジー化、アウティング(特に最後の二つは本編ではっきり描かれてない)、この辺りへのアプローチがシナリオブックではもう少しハッキリ描かれていたように思う。

映画では湊と依里の恋をアシストするように見えていた同級生の美青。いつもBL漫画を隠すことなく教室で読んでいる。同性愛に対して肯定的であり隠す必要がないと考えているのが分かる。でもそれはあくまでも当事者ではない美青にとっての考えにすぎない。結ばれないBL漫画の主人公たちを「尊い」「美しい」のだと表現してしまうところ。アウティングまでしかけるところ。
BL漫画において「葛藤がないとつまらない」と感想を述べる人たちにモヤモヤしていた感覚を思い出した。
美青は保利先生だけでなく湊にとっても怪物だったんだろうな。
だからこそ、私たちが映画のラストを「悲しく美しいエンディング」と捉えてしまったらそれこそ怪物になってしまうんじゃないかと。やっぱりあれはただ悲しいだけの結末ではないと感じた自分を信じたい。

それにしても美青ちゃん、どんなBL漫画を読んだらアウティング発言をしようと思うんだろう...2人が悲しい結末を迎える漫画なら尚更...カムアウトできない苦しさゆえの悲しい結末なのか全然関係ない悲劇の物語なのか分からないけど最近の漫画は特にアウティングが良くないっていうのは当然のこととして描かれてると思うのだけど...そこまでは考えられてないのかな。までも小学生っていうのもあるのか...

何度見ても好きなのは靴を分け合うところ。
本当はラストもやってたなんて。
映画で良かったのはケンケンしてたところ。

よりくんがあまりにも精神的に成熟しているのは何故なんだろう。

シナリオブックのラストで、大人の声に振り返りながらもまた2人で手を繋いで走ったのは、もう変わらなくていいと気付けたからこその行動だったと信じたい。でもそれを当事者に全部負わせるんじゃなくて社会が変わっていくことが当然

またラストが現実なのか死を意味するのか
映画(1回目)を見た直後も本を読んだ直後も私は現実世界での2人だと思った...。あの鮮やかさは2人の心を表現したのかと。本にも「現実に戻る」という文が挟まれ、2人が電車を出て用水路?を進む描写につながっていた。
じゃあ扉の外れた線路はなんなのかと言われるとわからない...ただ、実際映画のラストでは扉があった向こう側(線路)に足を踏み入れる前にスクリーンは暗くなったと記憶してる。その先に行ける未来があるという期待と願いがあの開かれた扉に込められているのかも...。

私たち大人が世の中を変えていくから、それまではお願いだから、理不尽な大人や世の中に背を向けたまま走り続けて欲しい。変わらないでいいんだと知っていて欲しい。

親の浮気や暴言を「面白いね」と笑って返したりのは、2人がいかに「何も感じない」を日々繰り返しているかを表しているのかな。笑い話にして大したことじゃないと思いながら頑張って生きている。おばあちゃんの家に引っ越すことを伝え依里に「ウケる」といつも通り笑い話にしようとした湊が、そのときばかりはすぐ取り消すところに繋がっているのが良かった。


[メイキング映像観賞後]
円盤が出てることに気付き購入。気に入った映画はメイキング映像を見るためだけに円盤を買ってしまう。撮影風景や役者さんたちがどんな姿勢で撮影に挑んでいたのかを見るのが好きなのだけど、それと同時に今回は監督の思いも垣間見える場面があって、自分の解釈と一致する部分も見つけられて嬉しかった。
あとすごく印象的なのが是枝組は若い女性が多い。エキストラでの経験やメイキング映像等の知識しかないけれど、撮影現場って男性がすごく多いイメージがあるからそれがすごく新鮮だった。あと監督が周りのスタッフさんと「今のよかったよね」とか「ここはこうですもんね」って言ったやりとりをよくしていたり、スタッフ間の空気がすごく和やか。例えば黒川くんの走る距離が想定より長くなってしまっても、それを尊重する監督や周りのスタッフが素敵だった。
ピリピリした現場も少なくない中で、とても好印象でした。
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