このレビューはネタバレを含みます
多角的な視点で描くというひとつの手法のお手本を見せてもらったような気がする。
安藤サクラ視点の話にミスリードがあることが続々と明らかになる。続けて、このタイトル自体がミスリードであることも。
この繊細なタイプの脚本が評価されたことは嬉しいし、国内でもこれが「伏線回収」のみによらず、繊細さによって評価されて欲しいな、と思う。
ただ、タイトルについては、だからこそのいらない読みを呼んでいる気がしなくもない。狙いもあるだろうから難しいけれど。
あのラストは、絵として美しく、印象に残るだろう。
私個人としては、「万引き家族」のほうが映画として好きだったが、ラストの印象なら断然こっち。
だが、これでは、彼らが、救われないというか、
そもそも子供たちだけで生きていくことは難しいし、あれが幻想のラストだとしたら、死ということになる。
そして死のモティーフは何度か繰り返されているし、埋葬=土に埋ま/めるモティーフも出ているが、
・生まれ変わりがある場合、彼らが生まれ変わりを望むしかなかったことになってしまう
・ない場合、そこで終わりになる
この映画でこそ、最後は希望のようなものを、一筋でも良いから見たかった。
田中裕子がよかったね。
あと、巻き込まれてるときの永山瑛太っていい顔するよね。
クィア映画としたくないというのは、それがこの映画の前景に出るモティーフではないからだろうが、これは間違いなくクィアとジェンダーに関する映画ですよ。