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怪物のyのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

あまりに深い作品故、一度見ただけで全てを理解できたとは言えない。

人間1人理解するのさえ不可能なのに、この映画の登場人物がまるで本当に存在しているかのようなリアルを体現してるから、2度3度リピートしなければ。

”意味のない“シーンが一つもない。

それくらい登場人物一人一人の言葉や仕草に思考や感情がこめられていていた。
実際どこまで子役がそれを理解しているのかわからないが、圧倒的な演技力で世界に引き込んでくれた。

3部構成の母親目線、先生目線、子供目線。

特に母親、先生目線で語られるシーンには多くの違和感を抱いた。

それは大人が子供に向ける何気ない言葉からくるものだった。

「湊が結婚して家族を持つまでは...」
まるで結婚して家庭を持つことが人としての幸せだと言ってるかのように感じた。

「白線を超えたら地獄に落ちるよ」
何気ない一言でさえ、社会の常識からはみ出すなと強迫観念が混じっている様に感じる。

無意識のうちにも生きづらさで世の中蔓延しているんだろうね。

「おい、それでも男かよ」
組体操中の言葉、私は眉をひそめた。それくらい違和感を抱いたし、男だからって逞しくある必要性を押し付けられる筋合いはないと思ったが、多分これは観てる世代で感じ方や捉え方も違うだろう。

全て何気ない通り過ぎて行くシーンで聞く言葉だが、生きづらさは当たり前に決まりきった日々の隙間に存在するんだろうな。

もし母親目線のみで語られるなら、誠意もクソもない理不尽な学校が怪物に見えてた。

だけど先生目線を知ったなら、怪物は逆になるだろう。

そして子供目線からすれば、生まれる世界を間違えた自分自身が怪物に見えてしまうだろう。

結局のところ誰もが誰かの怪物になり得るし、未知で理解できない存在が怪物なんだ。
解決するには、対話をすることだと思う。
それをしなかった或いは、そうできなかった大人たちが向かう事になった物語の終着地点...。
湊たちが秘密基地でやっていた遊び
「怪物だれだ?」の様に、質問をして、相手の存在を紐解いて確かめることこそが、解決方法だったんだろうな。

豚の脳かもしれない、普通じゃないと罵られた、人と違った、でもそんな2人だけの世界なら、生きづらさなんか一つもない理想郷だったと思う。

終わり方は好きです。
悲しみ一つも残さない2人の背中を見送れたんだから。
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