SONIA

怪物のSONIAのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

きっと何が正解という訳ではなく、いろいろな解釈ができると思うので、あくまでも自分の受けた印象を。

同じ場所に行っても右を見てる人と左を見てる人では景色が違って見えるように、印象は人によって異なる。その印象に大きな影響を与えるのは漠然とした世間の声や噂だ。おそらく「怪物」というのは実体があるのかないのかわからないけれど、何か怖いものなのだと思う。

その場しのぎの学校のお偉いさん、噂かデマかを流す同僚教師や近所の人、子供のイジメ、見て見ぬふり、あるいは勝手な思い込みを言いふらす同級生。それらは事実かもしれないし、まったくの勘違いかもしれない。

秘密の基地で芽生えた、少年ふたりの淡い恋心にも似た友情だけが真実だ。2人だけの世界は青々として、怪物はいない。

ところで火事の謎だが明かされていない。2人の少年が持っていたライター。もしかして放火‥⁈と思った私たちの中にも既に怪物が生まれている。誰もが怪物になりえる。

安藤さくらのどこにでもいそうな普通の人の演技が良かった。普通の人でもモンスターに変身していく。モンスターにだけ見える景色は相手が人間にすら思えない。

どこにでもある日常の危うさをよくぞ脚本にして映像化したと思う。パラレルワールドのようなSFチックな気分にもなった。
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