SONIA

オッペンハイマーのSONIAのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

まず結論から言うと作品自体の質の高さは4.4点、個人的好みだと3.3点、間をとって3.6点にした。

ノーラン監督の真骨頂といった時間と映像を駆使した作品だった。モノクロとカラーの対比、サブリミナルのように挟まれる爆発、時間軸を駆使してあそことここがつながっているのか、と驚かされたりとテクニック満載だった。

作品は大きく2つのパートに分けられる。
原爆を作り成功者となるまで、そして公聴会で糾弾されるところ。作品を見終ってまず思ったのは、彼は単に実験を成功させたかったのだろうと。学生時代に実験が下手でなじられたトラウマがどこかに残っていたのかもしれない。理論だけではなく実践で成功したかった。そしてそれはあまりにも多くの人々が犠牲になるという成功しすぎるという失敗を犯してしまった。毒入りリンゴを食べさせなかった学生時代のシーンはその後の人生を暗示していた。いや、もしかしたらこのシーンは事実では無く彼の内的幻想の映像化だったのかもしれない。

そして物理学者として才能を政治利用されたわけだが、共産主義な人々に囲まれ、一時は共産主義的幸福をどこかで求めていたのかもしれない。しかし破壊の後に幸福などありはしなかった。女性に対しても不器用で、物理学者としての成功だけが彼の生きがいだったのだろう。

というわけで、作品自体の質の高さは十分感じたのだが、ひたすら台詞のみで進んでいく構成で3時間はちょっと退屈に感じた。また登場人物が多いくて、後半名前が何人も出てくるが誰だっけ?と追いつけなかった。それでも特に支障はなかったが。

そしてやはり原爆は日本人にとってはとてもナーバスな問題で、今回映画とはいえその裏側が見られたのは大変興味深かったし、主人公はそれに対して後悔の念を感じていたはずなのだが、アメリカの正義ってなんなんだろう、と若干胸くそ悪くなったのは正直なところだ。

原爆を落とした人と指図した人が悪者で、作った人は悪者ではない、という当時の大統領の台詞があったが、時代に踊らされた天才物理学者は結局自分の目的達成のために多くの人々の犠牲とその後の核開発競争の原因を作ってしまったわけで、今更被害者な顔されても、あなたのその優柔不断さが世界を変えてしまったんだよ、と思わずにはいられなかった。その批判まで織り込み済みでの映画だと思うが。

最後に字幕について一言。石田泰子さんというベテランだが、「〜とでも⁈」みたいな半端な文章が多く、もちろん字数制限があるのは承知しているが、あまりにも多用されていたのが気になった。
SONIA

SONIA